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MLB

ロックアウトは「億万長者と百万長者の争い」にあらず。オーナーたちの強欲と傲慢が招いたMLB開幕延期<SLUGGER>

久保田市郎(SLUGGER編集長)

2022.03.02

シーズン最初の2カードが中止となり、開幕延期が決定。誰もが恐れていた事態がついに現実の物となってしまった。(C)Getty Images

シーズン最初の2カードが中止となり、開幕延期が決定。誰もが恐れていた事態がついに現実の物となってしまった。(C)Getty Images

 深夜2時過ぎにまで及んだ15時間の交渉も、デッドラインの1日延長も、最終的には実らなかった。3月1日(現地)、MLB選手会はオーナー側からの最終提案を拒否。コミッショナーのロブ・マンフレッドはシーズン最初の2カードを中止することを発表し、開幕延期が正式に決まった。

 これまでも、そして今回も、労使交渉が難航すると必ずと言っていいほど「億万長者対百万長者の戦い」という常套句が使われきた。一般ファンとは遠く離れた特権階級同士の争いという意味だ。

 だが、少なくとも今回に限ってはこの形容は正しくない。

 今回の労使対立を考える上で、前提条件として絶対に見落としてはならない事実がある。

 それは、MLBの収入が右肩上がりで増え続けているにもかかわらず、選手年俸は下がり続けているということだ。今回の労使対立は、この現状をどう是正するかをめぐっての攻防だった。
 2010年に61.4億ドルだったMLBの総収入は、パンデミック直前の19年には100億ドルを突破。10年足らずの間に、実に70%も増えたことになる。にもかかわらず、選手平均年俸は増えるどころか、ここ4年間で6%も減少してしまった。現在、40人ロースターに名を連ねている選手のうち、年俸100万ドル以上はわずか31.4%に過ぎず、逆に28.2%はマイナーリーガーで4万ドル程度しか稼いでいないという。

 繰り返すが、この間もMLB全体の収入は増え続けている。では、その分の金はどこに行ったのか。そう、オーナーたちの懐だ。

 そこで選手会は今回、年俸の上昇を妨げる要因(戦力均衡税、若手選手の低待遇、球団のFA権取得時期操作、ドラフト高指名権獲得のため意図的に低迷するタンキングの横行など)を一つ一つ取り除くことを目指した。

 年俸調停権がないため不当に年俸を低く抑えられているメジャー3年目未満の選手のための「ボーナスプール」制度導入もその一つだ。もともと、選手会は年俸調停権取得時期の短縮を求めていたが、それを取り下げる代わりにボーナスプール導入に合意した。
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