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“低レベルだった球場”を黙らせた圧巻弾。ヤンキースとの騒動に揺れたホワイトソックス遊撃手に賛辞の声「尊敬するしかない」

THE DIGEST編集部

2022.05.23

罵詈雑言を一振りで払ってみせたアンダーソン。本塁打後に見せたジェスチャーも含め、図抜けたカリスマ性を見せた。(C)Getty Images

 球場全体からブーイングと罵声が飛び交う異様な雰囲気だった。しかし、シカゴ・ホワイトソックスのティム・アンダーソンは周囲の"雑音"を文字通りの一振りでかき消した。
【動画】ヤンキース・ファンからのブーイングを黙らせる! アンダーソンの圧巻弾をチェック

 現地時間5月22日、敵地で行なわれたニューヨーク・ヤンキースとのダブルヘッダー2戦目に「1番・ショート」でスタメン出場したアンダーソンは、8回表に貴重な追加点となる今季第5号本塁打を放った。

 ニューヨーカーたちから情け容赦のない野次が飛んだ。というのも、前日の試合でヤンキースのベテラン内野手ジョシュ・ドナルドソンと騒動になっていたからだ。

 アンダーソンは、ドナルドソンから「よぉ、調子はどうだ。ジャッキー」と話しかけられて憤慨。詳細は定かになっていないが、「いろんな黒人選手への敬意に欠けていた」「まったくいらない発言」と怒りを滲ませると、一連の発言が球界に波紋を広げる騒動へと発展したために、28歳の名ショートは一部ヤンキース・ファンの"標的"にされたのだ。

 球場の雰囲気は、およそ「紳士たれ」を謳う門球団のそれではなかった。ブーイングに加え、Fワードを交えた「ジャッキー」という言葉も飛び交っていた。米メディア『Fan Side』のマーク・カルマン記者によれば、「どうやら1940年代の球界になったようだ」と皮肉るほど異様な空気間だったという。

 だからこそアンダーソンは燃えた。2死一、二塁の好機でヤンキースのジョナサン・ロアイシーガと対峙した背番号7は、カウント1-1から外角に投じられた84.5マイル(約135.9キロ)のスライダーを流し打ち。打球はあっという間にヤンキース・ファンが多く陣取ったライトスタンドに突き刺さった。
 
 この一発は試合を決定付けただけでなく、ドナルドソンとの騒動に対する周囲の喧騒を鎮静化させる意味でも大きかった。だからこそ本人はベースを一周している際に、口に指を当てて、「静かにしろ」と言わんばかりのジェスチャーを敵地の群衆にしてみせたのだろう。

 チームを5対0の勝利に導いた28歳には、チームメイトや指揮官は畏敬の念を抱く。ホワイトソックスを率いるトニー・ラルーサが「彼は評価されて当然だし、尊敬されて当然なんだ。誰かが彼を軽蔑したら怒るべきなんだ」と賛辞を送れば、この試合の勝利投手となったマイケル・コペックは、「尊敬するしかない」と脱帽した。

「間違いなく僕が見てきたなかで最高にかっこいい瞬間だった。観客全体が彼にブーイングを浴びせ、至る所から『ジャッキー』と飛び交っていた。そういう低レベルな態度を取られていたにもかかわらず、彼はホームランを打ち、勝利を大きく近づけてくれた。ああいうパフォーマンスには尊敬の念しかないよ」

 怒りを力に変え、見事なホームランを放ってみせたアンダーソン。球界屈指のショートが見せた真価は、まさにあっぱれだった。

構成●THE DIGEST編集部

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