4月24日のロッテvsオリックス戦で、ストライク/ボールの判定に不満げな態度を表したロッテ先発の佐々木朗希に対し、白井一行球審が詰め寄ったことが物議を醸した。佐々木が時の人だったこともあり、この件は球界外にも広がる大騒動となっている。だが、実のところ古くから審判と選手の間の“トラブル”には枚挙に暇がない。ここでは、そんな審判にまつわる事件を紹介しよう。
▼ド真ん中なのに「ボール!」判定の理由とは……?
1956年の南海(現ソフトバンク)のある試合でのことだ。マウンドにいたのは、高卒3年目の皆川睦雄。相手は8番打者で、カウントは3-0。皆川は「どうせ打ってこないだろうと」、それほど力を込めずにド真ん中へ直球を投げ込んだ。棒球だったが打者は見送り。だが、あろうことか球審の二出川延明のコールは「ボール!」だった。
当然ながら皆川は「なぜボールなのか」と二出川に猛抗議する。すると二出川が答えていわく、
「今のは気持ちが入っていないからボールだ」
この珍妙な返答に、何と皆川は納得してしまったという。それどころか、「この一件によって1球の大切さを学んだことが、その後大きなプラスになった」と後年になって語るほど感銘を受けていた。実際、皆川は通算221勝を挙げる大投手に成長し、確かに結果オーライと言えばそれまでだが、明らかにルールから逸脱した行為であることは間違いない。
なお二出川はこの“ド真ん中ボール”を「教育」と称して有望な新人投手によくやっており、同時期に西鉄(現西武)のエースとして活躍した通算276勝の大投手・稲尾和久が新人だった頃も同じことをしたという。昭和ならではの逸話と言えるが、現代ならSNSで即大炎上間違いなしだろう。
二出川はこの他にも豊富な逸話を持つ名物審判だ。もっとも有名なのが「俺がルールブックだ!」という“名言”。59年のある試合で、当時西鉄(現西武)の監督だった三原脩と「クロスプレーで走者の足と送球が同時の場合はアウトかセーフか」で論争となった際、アウトを主張する三原が「ルールブックを見せてくれ」と要求したことに対して出た言葉だ。
一見暴言のようだが、この場合は二出川の判断が正しい上に、野球規則には「審判員の判断に基づく裁定は最終のものであるからプレーヤー、監督、コーチまたは控えのプレーヤーがその裁定に対して異議を唱えることは許されない」と明記されている。試合において「審判がルールブック」なのはある意味で正しい。60年以上も前の発言が今も語り継がれているのは、そんな「審判の絶対性」を端的に表現しているからだろう。
▼ド真ん中なのに「ボール!」判定の理由とは……?
1956年の南海(現ソフトバンク)のある試合でのことだ。マウンドにいたのは、高卒3年目の皆川睦雄。相手は8番打者で、カウントは3-0。皆川は「どうせ打ってこないだろうと」、それほど力を込めずにド真ん中へ直球を投げ込んだ。棒球だったが打者は見送り。だが、あろうことか球審の二出川延明のコールは「ボール!」だった。
当然ながら皆川は「なぜボールなのか」と二出川に猛抗議する。すると二出川が答えていわく、
「今のは気持ちが入っていないからボールだ」
この珍妙な返答に、何と皆川は納得してしまったという。それどころか、「この一件によって1球の大切さを学んだことが、その後大きなプラスになった」と後年になって語るほど感銘を受けていた。実際、皆川は通算221勝を挙げる大投手に成長し、確かに結果オーライと言えばそれまでだが、明らかにルールから逸脱した行為であることは間違いない。
なお二出川はこの“ド真ん中ボール”を「教育」と称して有望な新人投手によくやっており、同時期に西鉄(現西武)のエースとして活躍した通算276勝の大投手・稲尾和久が新人だった頃も同じことをしたという。昭和ならではの逸話と言えるが、現代ならSNSで即大炎上間違いなしだろう。
二出川はこの他にも豊富な逸話を持つ名物審判だ。もっとも有名なのが「俺がルールブックだ!」という“名言”。59年のある試合で、当時西鉄(現西武)の監督だった三原脩と「クロスプレーで走者の足と送球が同時の場合はアウトかセーフか」で論争となった際、アウトを主張する三原が「ルールブックを見せてくれ」と要求したことに対して出た言葉だ。
一見暴言のようだが、この場合は二出川の判断が正しい上に、野球規則には「審判員の判断に基づく裁定は最終のものであるからプレーヤー、監督、コーチまたは控えのプレーヤーがその裁定に対して異議を唱えることは許されない」と明記されている。試合において「審判がルールブック」なのはある意味で正しい。60年以上も前の発言が今も語り継がれているのは、そんな「審判の絶対性」を端的に表現しているからだろう。