高校野球

【甲子園2日目のプロ注目選手たち】近江・山田が投打で躍動! 鳴門のエース・富田は乱調も随所に片鱗を見せた

西尾典文

2022.08.08

注目の近江vs鳴門戦は注目投手に明暗分かれるも、両者とも長所は出せていた。写真:滝川敏之(THE DIGEST)

 いよいよ開幕した第104回全国高校野球選手権大会。大会2日目に登場したプロ注目の選手たちの活躍ぶりを振り返る。

●有馬伽久(愛工大名電3年・投手):8回 被安打11 2失点(自責点2) 6奪三振 3四球

 5回に3安打を浴びて2点を失い、6回には脚が攣るアクシデントはあったものの、しっかりと試合を作りチームの大勝に貢献した。ヒジのたたみ方が上手く、縦に腕が振れるのが大きな長所。力を入れた時のストレートは140キロを超え、緩急の使い方も上手い。愛工大名電の先輩で同じサウスポーの東克樹(DeNA)の高校時代と比べても遜色ないレベルにある。大学進学が濃厚とのことだが、順調にいけば東のように4年後の上位指名も狙えるだろう。

●山田陽翔(近江3年・投手):8回 被安打4 2失点(自責点1) 13奪三振 0四死球

 立ち上がりこそストレートを捉えられたものの、中盤以降は全く危なげない投球でチームを勝利に導いた。最速148キロをマークした速球も勢いがあったが、それ以上に素晴らしかったのが変化球だ。ツーシーム、カットボール、フォークいずれもが打者の近くで鋭く変化し、スピードもあるためストレートと見分けがつかない。13個の三振はすべて空振りで奪ったものというところにも凄みが感じられる。滋賀大会では不振だった打撃も2本の長打を放ち、4番打者としての仕事もしっかりと果たしてみせた。
 
●富田遼弥(鳴門3年・投手):7回 被安打14 8失点(自責点8) 5奪三振 3四球

 終盤に崩れて意外な大差となったが、中盤まではさすがのピッチングを見せた。上半身の無駄な力を抜いたフォームで楽に腕が振れるため、打者は数字以上に差し込まれることが多い。カーブ、スライダー、チェンジアップも巧みに操り、特に右打者のヒザ元への変化球は素晴らしいものがあった。徳島大会の4試合を1人で投げ抜いてきた疲れもあってか、選抜と比べるとストレートの力がもうひとつだったものの、それでも高校生ではトップクラスのサウスポーであることは間違いない。有馬と同じく大学進学との話だが、ストレートに磨きをかければ4年後の有力候補になる可能性は十分だ。

●前田一輝(鳴門3年・外野手):4打席4打数1安打1打点

 選抜でも攻守に目立つプレーを見せたが、この日も初回の第1打席で山田陽翔(近江)の148キロのストレートをライトオーバーのスリーベースにし、改めてそのパワーを見せつけた。ヒットはこの1本だけだったものの、伸びやかなスウィングは迫力十分でヘッドスピードの速さも申し分ない。投手としても144キロをマークした強肩、12.00秒を切れば俊足と言われる三塁到達タイムで11.92秒を記録した脚力も魅力だ。時間はかかるタイプだが、スケールの大きさは抜群だけにぜひ早くからプロで鍛えてもらいたい選手である。

文●西尾典文
【著者プロフィール】
にしお・のりふみ。1979年、愛知県生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。アマチュア野球を中心に年間400試合以上を取材。2017年からはスカイAのドラフト中継で解説も務め、noteでの「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも多くの選手やデータを発信している。

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