敵地で球団の主力打者がブーイングや野次に晒されるのは当然の事象ではある。だが、ミネソタ・ツインズの主砲カルロス・コレアに対するそれは多くのスラッガーたちの比ではない。

　理由は明確だ。今から約５年前に彼が球界を騒然とさせた騒動の渦中にあったからである。2017年シーズンにヒューストン・アストロズが本拠地球場で電子機器による組織的なサイン盗みを行なっていたと明るみになり、当時の主力だったコレアにも疑惑の目が向けられ、非難の対象となった。

　もっとも、コレア本人は、「上がやっていたことで、フィールドの俺たちは関知してなかった。2018年と2019年は正々堂々とプレーしてワールドシリーズまで行ってるんだ」と反論。さらに「批判するやつらはちゃんと調べて、黙ってろよ！」と公然と主張したために、より一層、ファンの怒りを買った。

　騒動そのものは落ち着いた。だが、すっかりヒールと化したコレアに対する球場内でのファンの反応はツインズ移籍後も辛辣なまま。とりわけ2017年のワールドシリーズを戦ったドジャースの本拠地ロサンゼルスでは痛烈なブーイングに晒されている。現地時間８月９日から始まったドジャースとエンジェルスとの５連戦でも毎打席ごとに野次を受けた。
  　いまだ収まる気配のないブーイング。それに対して、"みんなの敵"となっているコレアは何を想うのか。ツインズの地元紙『Pioneer Press』の取材に応じた27歳は「もう嫌じゃなくなったね。俺はそれも野球の一部で、一緒に暮らしていかなきゃいけないものなんだと学んだ」と語った。

「俺は悟ったんだ。もうそれを受けるのはスタジアムだけのことなんだ。俺が行けば、みんながブーイングをする一種のエンターテイメントみたいな感じになっている。でも、街中で僕を見つけた彼ら（野球ファン）はとても親切さ。記念撮影を求めたり、子どものためにサインをお願いしたりしてくる。ロサンゼルスでも俺は家族とディズニーランドに水族館、そしてレストランに行ったけど、誰もが親切だった。だから学んだのさ。あれはエンターテイメントのひとつなんだって」

　サイン盗み騒動の槍玉となり、さまざまな経験をしたであろうコレア。それでもここまで達観したコメントを残すところには、彼の大物ぶりがうかがえる。

構成●THE DIGEST編集部

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