プロ野球

直近10先発で防御率1.81と好投しながら2勝2敗。若竜・髙橋宏斗の悲しき“無援護病”<SLUGGER>

SLUGGER編集部

2022.08.27

ドラゴンズの新エースに台頭しつつある髙橋。実力はピカイチながら、負け越しているのはやはりチームの“あの病気”のせい? 写真:徳原隆元

 今や球界を代表する若手ピッチャーと言っていいだろう。中日2年目の20歳右腕・髙橋宏斗である。

 中京大中京高から2020年ドラフト1位指名で中日に入団した髙橋は今季一軍デビューを果たすと、ここまで15先発して4勝5敗、防御率2.34、108奪三振をマーク。この成績に「おいおい、負け越している投手が球界屈指だって?」と思う方もいるかもしれないが、端的に言ってそれは髙橋自身の実力とは"関係のない"ことだ。

 今季80イニング以上を投げた52投手のうち、防御率2.34は両リーグ10位、奪三振率10.53は佐々木朗希(ロッテ)に次いで2位。年間100イニング以上&奪三振率10.00以上を達成すれば、高卒2年目では1968年の江夏豊(阪神)、14年の大谷翔平(日本ハム)に次いでプロ野球史上3人目の快挙となる。7月18日のDeNA戦から8月25日の巨人戦にかけては27.2回連続無失点記録も継続し、7月29日の広島戦では8回1死までノーヒットノーランの快投を見せた。

 にもかかわらず、髙橋のここまでの勝敗数は4勝5敗。直近10先発の成績を見ると、6回未満に降板したのは6月18日の巨人戦(5回3失点)だけで、5試合は7イニング以上&自責点2以下のハイクオリティ・スタート。無失点も4試合、3点以上取られたのも前述した巨人戦だけと、抜群の安定感を発揮している。

 にもかかわらず、この間で挙げた勝利はわずか2つだけ(2敗)。8月25日の巨人戦も、7回2失点にまとめながら1対2で敗れて敗戦投手となった。弱冠20歳の若竜は「チームを勝たせないといけない試合だった。自分どうこうより、チームが負けたことには責任を感じないといけない」と自らを嘆いたが、たった2点が"致命傷"になってしまうほど、中日打線に元気がない。
 
 1試合平均得点2.93、55本塁打はセ・リーグでダントツの最下位。本拠地バンテリンドームがいくら打者泣かせの球場とはいえ、チーム全体の本塁打数が村上宗隆(ヤクルト)と9本しか違わないという現状は寂しい。ちなみに村上は今季バンテリンドーム10試合で7本塁打を打っているが、中日の打者でシーズン8本塁打以上の打者はビシエド(11本)だけだ。

 25日の試合も、3回の無死満塁、6回の1死満塁、8回の1死一、二塁のチャンスを作りながらいずれもスコアボードを動かせず。唯一の得点は、5回1死三塁からの髙橋の打席でフィールドチョイスによって得たものだけだった。

 投手がゼロに抑えても、得点がなければチームは勝利できない。当然、勝ち星がつくこともない。髙橋の援護率は3.12だが、7得点以上をプレゼントした2試合によってかさ上げされた格好だ。7月29日の広島戦(援護点8)を除いた直近5試合の援護点は0→1→1→0→1。仮に髙橋が無失点に抑えても3勝しかできていなかったことになる。

 この深刻すぎる"無援護病"で連想させるのが、かつての山本由伸(オリックス)だ。高卒3年目の2019年、山本は防御率1.98で最優秀防御率のタイトルを獲得したが、打線の援護が恵まれず、わずか8勝(6敗)。4月3日のソフトバンク戦では、9回1安打無失点に抑えながら勝利投手になれなかった。

 山本も無援護に苦しみながら、今やメジャーも注目する日本最強投手へと成長している。髙橋も、この"苦行"を乗り越えた先に輝かしい未来があると祈るばかりである。

構成●SLUGGER編集部
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