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なぜ「投げない」ジャッジは根強くMVPに推されるのか? 米球界で起きる“伝説の大打者超え”への期待

THE DIGEST編集部

2022.09.07

日々ホームランを打ち込み、ペースを上げているジャッジ。その出色のパフォーマンスにMVP獲得の期待が上がっている。(C)Getty Images

日々ホームランを打ち込み、ペースを上げているジャッジ。その出色のパフォーマンスにMVP獲得の期待が上がっている。(C)Getty Images

「ジャッジは投げていないじゃないか」

 ここ最近、巷を賑わせている今季のア・リーグMVP争い。大谷翔平(ロサンゼルス・エンジェルス)とアーロン・ジャッジ(ニューヨーク・ヤンキース)の一騎打ちとなっている感があるタイトルレースを論じるうえで、前者を推す一部のメディアやファンが強調するのが冒頭の言葉だ。これをSNSで見かける機会は増えている。

 ではなぜ、現地で“投げない”ジャッジを推す声が根強く存在するのか。

 無論、彼が圧倒的な数字を残しているからというのは間違いない。近年のMVP決定に大きな影響があるという指標「WAR」もジャッジは両リーグトップの8.4(bWAR)。さらに打率.302、54本塁打、加えてOPS1.085といずれも高水準で、相手球団からすれば太刀打ちできないほどだ。

 そうしたなかでジャッジの“価値”をより高めているのが、「真のホームラン記録」と称されるロジャー・マリスのア・リーグ年間最多本塁打記録(61本)を超える可能性だ。
 
 もっとも、この記録はメジャー全体では7位に過ぎない。1位のバリー・ボンズ(73本)とは12本も開きがある。しかし、その本数を超えたマーク・マグワイア、サミー・ソーサ、そしてボンズは、揃って現役時代の禁止薬物使用が判明。3人の本塁打記録は、記録上は残っているものの、マリスの61本こそ何にも汚されない“真の記録”と現地メディアは評価しているのだ。

 ゆえに、ベーブ・ルースを超えたマリスの大記録を塗り替え、新たに金字塔を打ち立てれば、「ジャッジは歴史的なスラッガーとなる」。これがジャッジを推す人々の主な意見というわけである。

 ちなみに1961年にマリスが残した主な打撃スタッツと比較しても、ジャッジの凄まじさが浮かび上がる。

マリス:打率.269、61本塁打、141打点、出塁率.372、長打率.620、OPS.993
ジャッジ:打率.302、54本塁打、117打点、出塁率.403、OPS1.085

 時代背景やルール、さらに球質などあらゆる違いから一概に比較はできない。しかし、単純にホームラン数だけを見れば、ジャッジは球界の「伝説」と化していたマリスを凌駕する。そんな期待が膨らみ、MVP獲得をプッシュする声は後を絶たないわけである。

 意外にも当人は冷静だ。周囲の喧騒が強まるなかで、こう言い残している。

「(マリスについては)何もない。僕はただ、チームが勝つためにできることは何でもしようと思っているだけ。それに記録は僕にとって重要じゃない。あくまで記録はオフシーズンの話題だ」

 レジェンドとの比較を意に介さず、淡々とチーム勝利のみを見定めるジャッジ。これだけの傑物と大谷が争っていると考えると、MVPの行方はますます興味深い。

構成●THE DIGEST編集部
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