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61本へのあらぬ批判は間違い? ジャッジは「ヤンキー・スタジアムだから本塁打が多い」のではない! 【検証】

THE DIGEST編集部

2022.09.29

ついに61号が飛び出したジャッジ。彼に対する“あらぬ批判”は本当に正しいのか。(C)Getty Images

 念願の一発がついに飛び出した。現地時間9月28日、ヤンキースのアーロン・ジャッジは敵地で行なわれたブルージェイズ戦の7回に今季61号となる勝ち越し2ランを放った。60号の大台到達から8試合ぶりの一発で、1961年のロジャー・マリスに並ぶア・リーグ記録となっている。

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 すでに大谷翔平(エンジェルス)とのMVPレースも終始リードしていた印象もあるが、この"歴史的な一発"によりさらに手繰り寄せた感もある。ただ、時にジャッジに対してこんな批判も聞かれる。「狭いヤンキー・スタジアムだからジャッジは本塁打が多いんだ」と。では、果たしてジャッジは本当に本拠地の恩恵で活躍できているのだろうか。

 結論から言うと、「関係ない」。

 そもそも、こうした議論が起きる理由としては、ヤンキー・スタジアムが狭いという認識からだろう。確かにライトスタンドまで314フィート(約95.7m)、レフトスタンドも318フィート(約96.9m)とあってメジャー本拠地球場の中でも狭い方に入り、平凡なライトフライと思われた打球が右翼席最前列に吸い込まれるシーンも散見される。
 
  こうした"イメージ"が先行して、ジャッジもその恩恵を受けているのではないかという声も上がるだが、実はヤンキー・スタジアムは極端に打者有利な球場ではない。平均的な球場(100)と比べてどれだけ得点や本塁打などが出やすいのかを示す「パークファクター」という指標を見ると、右打者の得点指数はちょうど平均の100で全体15位、本塁打指数は107でやや出やすいとはいえ、こちらも全体15位と非常に中立的である。

 実際、ジャッジの今季のホーム/アウェイ成績を比較すると、【ホーム】77試合/打率.312/30本塁打/長打率.677/OPS1.089【アウェイ】74試合/打率.315/31本塁打/長打率.715/OPS1.153。"打者有利"と言われているホームゲームよりも、敵地での試合の方がずっと成績がいいのだ。

 また、「xHR」という指標もある。これはフェンスの高さ、飛距離などを考慮した時にそれぞれの球場でプレーしていたらどれだけの本塁打を放ったかを示すもので、ジャッジはヤンキー・スタジアムだけでプレーしていた時は、昨日時点で61本塁打と算出されている。タイガース本拠地のコメリカ・パークだと48本(!)と極端に少ないものの、逆に15球場以上ではヤンキー・スタジアムよりもっと高い数字で、レッズ本拠地だと69本(!)との数字もある。

 この日の節目の一打も敵地で放ったもので、改めて言うが、今年のジャッジはヤンキー・スタジアムだから好成績を残しているわけではない、ということである。他のセイバーメトリクス指標を見ても、ジャッジの攻撃力は歴史的にも傑出。彼の成績に"ケチ"をつけることは難癖以外の何物でもない。

構成●THE DIGEST編集部

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