プロ野球

日本代表でも好投した大阪桐蔭・川原、東洋大の150キロ右腕・羽田野――2022年ドラフトでまさかの指名漏れとなった投手たち<SLUGGER>

西尾典文

2022.10.26

大阪桐蔭の川原(左)はU-18ワールドカップでも無失点だったが指名もれ。市立和歌山の米田(右)にはロイヤルズなども注目していたが、NPBからは指名がなかった。写真:THE DIGEST写真部

 支配下69人、育成57人の合計126人が指名された今年のドラフト会議。その一方で、実力や将来性を備えながらも名前が呼ばれなかった選手も確かに存在している。そんな指名を逃した逸材について、現地で400試合以上を取材するスポーツライターの西尾典文氏に、特に来年以降再びドラフト戦線に浮上してくる可能性が高い選手を投手、野手それぞれ5人選出してもらった。今回は投手編だ。

▼川原嗣貴(大阪桐蔭高)
 センバツでは背番号10を着けていたが、エースとして全国制覇に大きく貢献。その後は完全にエースとなり、夏の甲子園、U-18ワールドカップでも見事なピッチングを見せた。190cm近い長身だがフォームのバランスが良く、長いリーチを生かした豪快な腕の振りも特長。

 ストレートはコンスタントに140キロ台中盤をマークし、打者の手元で変化するスライダー、スプリットも高レベルだ。ストレートは数字に見合うほどの威力が感じられないのは課題だが、これだけの長身でまとまりもあるというのは大きな魅力。長身に見合うだけの筋力がついて、凄みが出てくれば4年後に上位候補となる可能性は十分にある。

▼米田天翼(市立和歌山高)
 馬力が魅力の本格派右腕。エースとして出場したセンバツでは内角を強気に攻めるピッチングで、花巻東や明秀日立の強力打線を抑え込んで見せた。上背はないもののたくましい体格で下半身が強く、躍動感のあるフォームから投げ込むストレートは打者の手元で勢いがある。

 少し高めに浮くボールも目立つが、ホップするような球筋で空振りを奪えるのは魅力だ。先輩の小園健太(DeNA)に比べると変化球の質、精度は劣るものの、ストレートの勢いに関しては決して引けをとらない。コントロールと変化球のレベルアップが今後のポイントになるだろう。
 
▼高坂綾(千葉経済大)
 近年レベルの上がっている千葉県の大学野球を代表する右腕。下級生の頃は2部リーグでプレーしていたが、3年春の入替戦で一部に昇格すると、4年春にはチームを初優勝に導く原動力となった。ストレートは140キロ台前半が多いものの、力を入れると145キロ以上をマーク。

 スライダー、カットボールはともに打者の手元で鋭く変化し、スピードと曲がりの大きさにバリエーションがあるのが特長。走者を背負ってからの粘り強さも光る。ストレートのアベレージが上がってくれば、プロも狙える素材であることは間違いない。

▼羽田野温生(東洋大)
 高校時代から評判だった大型右腕。大学進学後は層の厚い投手陣の中でなかなか結果を残すことができなかったが、3年秋は9試合に登板して防御率0.00と、抑えとして見事な成績を残した。しかし最終学年となった今年は脇腹を痛めた影響で低迷。

 春は1試合の登板に終わり、秋も登板がなく、指名が見送られた。活躍したのは1シーズンだったものの、身体的なスケールと楽に150キロを超えるストレートの威力は申し分ない。コントロールが安定して、シーズンを通して投げられるようになれば、2年後は目玉となる可能性を秘めた投手である。

▼松田賢大(バイタルネット)
 実績はないものの将来性が光るサウスポー。高校時代は怪我で3年夏は登板がなかったが、社会人2年目から公式戦に登板し、着実に力をつけている。今年も4月のJABA長野大会で西濃運輸を相手に7回を1失点、10奪三振と好投。その後は短いイニングでの登板が多かったが、ドラフト会議後のオープン戦でも結果を残している。

 右肩が開かず、前でリリースできるため140キロ台前半でも打者は差し込まれることが多い。コーナーを突くコントロールも備えている。今年で21歳とまだ若いだけに、ボールの力がついてくれば来年再びドラフト戦線に浮上してくることも期待できるだろう。

文●西尾典文

【著者プロフィール】
にしお・のりふみ。1979年、愛知県生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。アマチュア野球を中心に年間400試合以上を取材。2017年からはスカイAのドラフト中継で解説も務め、noteでの「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも多くの選手やデータを発信している。

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