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侍ジャパン

WBC球への“苦手意識”を露呈した松井裕樹。無失点でも気になった乱れ「まだバッターに力んでしまう」【WBC】

THE DIGEST編集部

2023.02.27

無失点でマウンドを降りた松井。しかし、その内容はお世辞にも褒められたものではなかった。写真:梅月智史

無失点でマウンドを降りた松井。しかし、その内容はお世辞にも褒められたものではなかった。写真:梅月智史

 結果的にスコアボードに刻まれた数字は「0」。それでも、松井裕樹(楽天)の投球は決して褒められるものではなかっただろう。

 ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)に挑む侍ジャパンに選出された松井。宮崎で合宿中の彼に“初実戦”の場が巡ってきたのは、2月26日に行なわれたソフトバンクとの壮行試合だ。

 2対2という競った展開で迎えた6回裏に背番号13はマウンドに立った。

 先頭のウィリアム・アストゥディーヨを3球でショートゴロに打ち取った松井だったが、2人目の正木智也にはストライクが1球も入らなかった末にストレートで四球。続くフレディ・ガルビスには粘られた末にスライダーが外れ、再び四球を与えた。

 後続の嶺井博希と川瀬晃はいずれもフライアウトとして無失点には抑えた。だが、ボールが高めに抜ける場面が悪目立ち。降板後に本人が「変化球でストライクがなかなか取れず」と語ったように制球に苦しんだ感は否めなかった。

 今春の松井は、NPBの公式球よりも滑るWBC公式球への対応に試行錯誤を繰り返してきた。侍ジャパン合宿合流直前の2月14日に行なわれた日本ハムとの練習試合では、⅔回を被安打5、6失点(自責2)と乱れた。
 
 この日本代表合宿でも苦闘が続いていた。予定日以外にもブルペンに入った松井は、納得のいくまで黙々と投げ込んだ。もともとキャンプ期間中は多投するタイプではあるが、ある記者から「投げ過ぎじゃないか?」という声が上がるほど、WBC球に馴染もうとした。

 投球フォームを「知らず知らずのうちにインステップしていて、リリースのタイミングがずれていた」と修正した24日のブルペン後には、「ボールも強かったですし、抜けても強さがあったボールだったんで、自分の中ですごく前進した」と手応えを口にしていた松井。しかし、このソフトバンク戦の投球を見る限り、“突貫工事”による苦手意識の克服は、いまだ途上にあると言える。

 WBCまでは2週間を切っている。ここからどう修正していくのか。当人は、やや険しい表情で、こう語った。

「まだバッター相手に力んでしまって、リリースが早かったですね。まぁ、それ(相手)以前ですかね。力みのところでやれることがあると思う」

 今大会から「ワンポイント起用の禁止」というルールが設けられており、「ここは左でワンポイントだ」という“セオリー”はない。とはいえ、リリーフ陣では貴重な中継ぎ左腕である松井が、接戦のゲーム終盤に起用される可能性は大いにある。それだけに調子が上向くのを願うばかりだ。

取材・文●羽澄凜太郎(THE DIGEST編集部)

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