期待を裏切らない堂々たるピッチングだった。

　３月９日に東京ドームでもワールド・ベースボール・クラシック（WBC）が開幕。１次ラウンド・プールＢの第２試合では、侍ジャパンが中国代表を８対１で撃破。史上初となる３度目の大会制覇に向けて好発進した。
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　この試合で侍ジャパンを牽引したのは、二刀流スターの大谷翔平（ロサンゼルス・エンジェルス）だ。

　試合直前には、時差の関係から深夜の観戦を余儀なくされた米メディアの記者たちやファンがこぞって「オオタニを見る」「彼のために起きた」とSNSに投稿。さらに日本のファンが大勢詰めかけた東京ドームのスタンドでは一挙手一投足に歓声が巻き起こった。代表戦ということを加味しても、間違いなくプレッシャーはあったはずだ。

　それでも前日会見で「今の自分の100％は出せる」と静かに意気込んだ28歳は、周囲の喧騒をよそに淡々と自らの仕事を全うした。
  　とりわけ圧巻だったのが「投手・大谷」のパフォーマンスだ。先頭打者からいきなりスライダーで空振り三振を取った初回を危なげなく三者凡退で終わらせると、その後も小気味いい投球で、中国打線をねじ伏せていく。

　２回に160キロをマークした４シームに加え、スライダー、２シーム、そして“伝家の宝刀”と言われるスプリットも折りませながら相手打者を翻弄した大谷。４回に１死からヤン・ジンに初ヒットを許したが、直後に迎えた元ソフトバンクの真砂勇介を変化量の異なるスライダーで空振り三振に切って得点を許さず。“世界最高峰”と言われるメジャーリーグで「史上最高」と称される異次元の投球術で、過去４大会のWBCで日本が負けた経験のない中国に地力の差をしっかりと見せつけた。

　WBCの設ける球数制限（１次ラウンドは65球）も考慮して４回を投げ切った降板となった大谷。４回裏に自らダメ押しのタイムリーツーベースを放ち、中国を投打で寄せ付けなかった。

　試合前に「プランはある。我々にとってはチャレンジになる」と語ったディーン・トレーナー監督が率いる中国に全く反攻の余地を与えなかった大谷。そのワールドクラスの技術力には、ただただ脱帽するしかない。

取材・文●羽澄凜太郎（THE DIGEST編集部）

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