侍ジャパン

「1秒1秒がすごく宝物」ダルビッシュ有が12年ぶりの日本マウンドで感じた“特別な感情”「生まれ育った国だからこそ投げた」【WBC】

THE DIGEST編集部

2023.03.11

韓国戦に先発したダルビッシュ。打ち込まれたが、味方打線が爆発し勝利投手となった。写真:梅月智史

 ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)1次ラウンドプールBの第2戦が東京ドームで行なわれ、日本代表は韓国代表と対戦。試合は13安打を放った侍打線が大量13得点を挙げ、宿敵を圧倒。13対4で完勝して今大会2勝目を飾った。

 先発マウンドを託されたのは、メジャーリーガーのダルビッシュ有(サンディエゴ・パドレス)だった。14年ぶりに日の丸のユニフォームを着て臨んだ初回のマウンドは、わずか12球で終え、上々の立ち上がりで終えた。
 
 2回も完璧に抑えたダルビッシュだったが、3回に先頭打者のカク・ベクホに二塁打を許すと、8番のヤン・ウィジにカウント1-2から6球目のスライダーをレフトスタンド上段に運ばれる2ラン本塁打で2失点。さらにキム・ハソンの三ゴロを村上宗隆が悪送球してしまい2死二塁のピンチ。続く3番のイ・ジョンフには右安打を打たれて3点目を失った。

 球場に嫌な雰囲気が漂ったが、その裏に侍打線が4点を奪い逆転に成功した。ダルビッシュは「1点は取って欲しいなと思って見てたんですけど、一気に4点を取ってもらって頼もしかったです」と、打線に感謝した。

 その後も侍ジャパンの打線は止まらず、5回には近藤健介が右中間へソロホームラン、吉田正尚が犠牲フライで2点を追加。6回には下位打線がつながり、一気に5点を奪取。ムードは完全に日本ペースとなった。ベンチで戦況を見守っていたダルビッシュも「最高の雰囲気だった」と振り返った。
 
 試合は打線が爆発した日本が13対4で韓国に圧勝。ダルビッシュは3回48球を投げ、被安打3、奪三振1、失点3(自責点2)で勝利投手になった。

 決していい内容の投球だったとは言えないが、36歳のベテラン右腕は「球速(最速154キロ)も出ていましたし、コントロールはまだですけど、最初の試合としては良かった」と自身のピッチングを冷静に振り返り、公式戦初登板に確かな手応えを感じていた。

 日本での登板は日本ハム時代の2011年以来、12年ぶりだった。ダルビッシュは久しぶりに踏む日本のマウンドを"特別"と感じて投げていたという。「育った場所ですので、今日という機会はもうないでしょうし。そういう意味でも、最後かもしれないと思って投げました」とマウンド上での胸中を明かし、具体的な思いを次のように語っている。

「自分が生まれ育った国で日本人が自分たちのプレーを見てくれることは、アメリカでずっとプレーしているとなかなかない。すごくありがたかったし、今まで野球をやってきたのは日本という国がないとなかったことなので、そういう感謝も込めて投げられたので来て良かった」

 メジャー組で唯一、2月の宮崎合宿からチームメイトと一緒に過ごした時間を「1秒1秒がすごく宝物になっている」と表現するダルビッシュ。投手陣との絆やチームとしての一体感を享受できていることに幸せを感じているようだ。

 36歳のベテラン右腕は頼もしい後輩らと一緒に、自身が14年前に体験した"世界一"の景色を見るため、必要とされる場面で投げ続ける。

構成●THE DIGEST編集部

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