侍ジャパン

懐疑論を覆して夜空に舞った“たっちゃん”。ヌートバーの日本代表で掴んだ世界一の意味「生涯忘れない」【WBC】

THE DIGEST編集部

2023.03.22

鮮やかに光った金メダルを片手に満面の笑みを浮かべたヌートバー。その表情が充実感を伺わせた。(C)Getty Images

 25歳の若武者が"異文化"に馴染み、そして世界の頂に立った。ラーズ・ヌートバー(セントルイス・カーディナルス)だ。

 日本代表がアメリカ代表を3対2で破り、3大会ぶり3度目の世界一で幕を閉じたワールド・ベースボール・クラシック(WBC)。7戦無敗という怒涛の快進撃を見せたチームにあって小さくない存在感を放ったのが、全戦で「1番・センター」としてスタメン出場を果たしたヌートバーだった。

 大会前には懐疑的な声も小さくなかった。日系人選手として初めて侍ジャパンメンバーとなった25歳だが、メジャーリーグでの活動期間も実質2年。NPBに所属する他の日本人選手と比較して、選出の是非を問われた。

 しかし、「僕は信じてる」と語った栗山英樹監督の信念は間違ってはいなかった。大会前にチームメイトから授かった"たっちゃん"(※ミドルネームの達治から取った)の愛称で親しまれるようになったヌートバーは、あっという間に侍ジャパンに馴染んだ。そしてポジティブな空気をチームに提供した彼は、打率こそ.269とやや失速したが、出塁率.424、得点圏打率.375と活躍。元気印の"切り込み隊長"として欠かせない役割を担った。

 ヒットを放った後に見せる「ペッパーミルパフォーマンス」など少なくない話題を日本列島に提供したヌートバー。そんな一躍ブレイクを遂げた25歳は今大会を「最高の気分だ。短い期間でしたけど、チームでハードワークが出来た。そして何より日本のために優勝できたことは幸せだ」と回想。そして、優勝の瞬間を振り返った。
 
「すべてが初めてのことばかりだった。だけど、素晴らしい選手と、素晴らしい監督とコーチ、そして素晴らしいスタッフがいたから優勝はできると信じていた。達成した瞬間は家族も僕も感情的になって喜んだよ」

 そして、今回の代表入りを後押ししてくれたという家族に「本当に感謝しかない。母のおかげで日本代表に入れた。金メダルは彼女にあげたい」とコメントしたヌートバーは、異国の地でプレーした想いを語った。

「日本で2週間も生活ができた。日本にいたことは僕にとって特別な瞬間になった。9歳から日本代表になりたいと思っていたから、本当に今は夢の中にいるような気持ちだよ。この野球の歴史の中でも最高の勝ち方をしたと思う」

 試合終了直後にはナインに胴上げされて3度も宙を舞った。その瞬間を「あれは生涯忘れない」と感慨深げに噛みしめたヌートバーは、その表情は充実感に満ちていた。

構成●THE DIGEST編集部

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