きわめてシリアスな局面でハプニングが起こった。

　現地５月23日、ニューヨーク・ヤンキースvsボルティモア・オリオールズの一戦。４対５で１点のビハインドを背負うヤンキースは４番手に右腕のマイケル・キングをマウンドに送る。先頭打者を三振に仕留めた直後だった。なんとキングは捕手とのサイン交換に使う機器「ピッチコム」をダグアウトに向かって放り投げたのだ。

　キングは「僕がスライダーと発信してもベン（・ロートベット捕手）にはシンカーと伝わってしまっていた」と説明。「故障でタイムを取れるかどうか分からなかったから、慌ててしまった」とすぐさまベルトから外し、スローに及んだという。

　ところがそれは観客席の女性の元に飛んでいってしまう。「長方形の小さな電子部品を投げるのは慣れていないからね」と笑いながら振り返るキング。「ダグアウトの前で落ちると思っていたら、フリスビーのように浮いて飛んでいったんだ。そしてそれがファンに当たりそうになるのを見た」と回想する。
  　機器は会場スタッフが女性から無事に受け取って回収された。ピッチコムはMLBがチームに提供している機材であり、「送信機または受信機を紛失した場合は一台につき5000ドル（約70万円）の交換費用が請求される」との規定がある。

　これを試合後に報道陣から知らされたキングは「え？ 5000ドル？ まったく知らなかったな」と目を丸くする。「返ってこなかったら（球団から）請求されていたと思う？」と問われると、「そうならないように祈っていただろうね。戻ってきて本当に良かったよ」と答えて、ニヤリと笑った。

　ピッチコム問題を解決したキングは２回を見事にシャットアウト。チームは９回裏に同点に追いつくと、10回裏に逆転サヨナラ勝ちを収めた。キングは今季初勝利を掴んでいる。

構成●THE DIGEST編集部

【動画】ヤンキース右腕がピッチコムを観客席に投げ入れる実際の映像

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