高校野球

5打数1安打で初戦敗退も攻守でアピールした上田西・横山聖哉の「只者ではない雰囲気」【甲子園1日目のプロ注目選手】<SLUGGER>

SLUGGER編集部

2023.08.07

惜しくも初戦敗退となった上田西・横山だが、潜在能力の高さを遺憾なく発揮した。写真:THE DIGEST写真部

 大会第1日、ドラフト候補という意味で最も注目を集めていた選手が上田西のショート、横山聖哉である。入学当時は173㎝、63㎏と小柄だったものの、この2年間で見違えるほど身体が大きくなり、現在では181㎝、82㎏まで大きくなっている。体格の良い選手が揃うチームにあってもその身体つきは一際目立ち、立ち姿だけでも只者ではない雰囲気をまとった選手である。

 今大会は他にも野手に注目選手が多いが、中でも横山にスカウト陣が注目する理由がある。それはこの1年での成長スピードにある。身体面だけでなく、プレーについても昨年から大きくレベルアップしており、ドラフト候補として評判になり始めたのは今年の春からなのだ。佐々木麟太郎(花巻東)、真鍋慧(広陵)、同じショートの山田脩也(仙台育英)などが下級生の頃から甲子園など大舞台でプレーしているのとは対照的である。

 迎えた土浦日大との開幕ゲームは延長タイブレークまでもつれ込む接戦となったものの、10回表に一挙6点を奪われてチームは敗戦。横山自身も5打数1安打と成績だけを見れば物足りないものに終わったが、それでも横山の評価は下がることはなく、むしろ大きくアピールしたと言えるのではないだろうか。
 
 圧巻だったのがショートの守備である。立ち上がりの1回にいきなりゴロをさばく場面があったが、見事なグラブさばきとハンドリングで処理。打球は決して難しい当たりではなく、一見すると何でもないプレーに見えるものの、ボールがグラブにおさまってから投げるまでの速さは明らかに他の選手とは違い、ファーストに一直線で届くスローイングも高校生離れしたものがあった。このプレーを見ただけで高い能力を全国に知らしめたと言ってもいいだろう。

 また、このゴロをさばく直前には一塁走者の盗塁に対して捕手からの送球を受け、タッチするプレーがあり、判定はセーフになったものの、その動きの良さも目を見張るものがあった。その後もゴロを3回、ライナーとフライを各1回処理しているが、どのプレーもスピードと堅実さの両方が感じられた。投手としても最速149キロをマークする肩の強さがあってもそれに頼り過ぎることなく、丁寧に処理できるのも長所である。

 バッティングも全体的に力みが目立ったものの、第2打席に打ち上げたファーストへのファウルは高々と打ちあがったものでスウィングの速さを感じさせ、また第4打席のセンター前ヒットも少し身体が流れながらも鋭い打球は目立った。もう少し上半身の力を抜いて、楽に鋭く振れるようになれば確実性もアップするはずだ。

 わずか1試合でのプレーだったが、残したインパクトは十分なものがあったことは間違いない。プロでもぜひショートで鍛えてもらいたい素材であり、10月のドラフト会議でもその名前が呼ばれる可能性は高いだろう。

構成●SLUGGER編集部