プロ野球

“声出し番長”大下には吉井監督も感服。“ゴリラ”陽川は出足こそ好調だったが...【現役ドラフト選手通信簿:パ・リーグ】<SLUGGER>

藤原彬

2023.08.24

移籍後初打席初本塁打を放った陽川だが、現在は二軍で調整中。写真:産経新聞社

 昨オフ、初の試みとして行われた現役選手ドラフト。新天地で巣立った12人の選手たちはどのようなシーズンを過ごしているのだろうか? 通信簿形式でここまでの働きぶりを評価する。今回はパ・リーグ編だ。

※通信簿は「よくできました」「まずまずです」「可もなく不可もなく」「がんばりましょう」の4段階
※成績は8月23日時点

■大下誠一郎(オリックス→ロッテ)
評価:まずまずです

 オリックスのリーグ2連覇を陰で盛り上げた"声出し番長"。新天地でも遠慮なく声を飛ばし、吉井理人監督を「正直、こんなに影響を及ぼすものなのか」と驚かせている。プロ入り初の開幕一軍入りを果たしながらわずか25打席しか出場機会を得ていないが、打率.263、出塁率.417とバットでも存在感を発揮している。二軍では遊撃以外の内野3ポジションに加えて捕手と左翼にも取り組むなど、出番増へ意欲的。出塁率.370とBB/K1.56は過去2年と同じく高水準で、得点力不足に悩む一軍定着を狙う。

■正隨優弥(広島→楽天)
評価:可もなく不可もなく

 貴重な大砲候補が、着実に研鑽を積んでいる。一軍では5月半ばに2打席立っただけだが、二軍で記録している打率.286とOPS.852は規定打席を満たせばリーグ3位に相当する数値だ。6本塁打は広島に在籍した2021年の11本を思えば物足りなさも残るが、四球率13.4%は前年から5%以上も上昇し、二軍でのやり残しはないと打撃で語っている。右打ちで強打の外野手は球界全体でも不足しているだけに、今季中には一軍で足跡を残しておきたい。

■古川侑利(日本ハム→ソフトバンク)
評価:可もなく不可もなく

 不屈の渡り鳥はプロ10年目も意気盛んだ。4球団目のチームに移籍し、一軍では4、5月の8登板だけで防御率5.00と精彩を欠いたが、二軍では23登板で防御率1.09と再昇格をアピールしている。移籍が決まってからは本格的なウェートに取り組み、降格後は半月以上も登板がない時期を経験しながら、腐らずに長い距離の遠投や練習での投球数を増やして出番に備えた。昨季はトライアウトから這い上がり、日本ハムで自己最多の34登板。残り少ないシーズンで、層が厚い一軍のブルペンに割り込めるか。
■陽川尚将(阪神→西武)
評価:可もなく不可もなく

 阪神では対左要員として存在感を発揮し、ゴリラポーズも人気を呼んだが、新天地ではまだ本来の力を十分アピールできていない。5月19日のソフトバンク戦での移籍後初打席を挨拶がわりの本塁打で飾ったが、続く6試合では1安打のみと後が続かなかった。二軍では67試合でOPS.809とまずまずの成績を残し、6本塁打のうち5本を放っている左投手には打率.316と、前年同様に相性の良さを発揮してはいる。一軍は若手を積極的に登用する方針で、32歳が生き残るには起爆剤が欲しい。

■松岡洸希(西武→日本ハム)
評価:がんばりましょう

 西武から移籍したサイドハンドはまだ一軍登板がないままだが、二軍で先発に挑戦中。4月には1回もたず10失点を喫すなど、防御率は昨季と同じ5点台だが、7月以降は制球改善とともに投球内容も安定し始めた。リリーフ時代と比べて奪三振率は低下傾向だが、ゴロを打たせる割合を増やすなど、役割の変化に伴う適応の兆しを見せている。田中正義や杉浦稔大など、他球団から獲得した投手の戦力化には長けているチームで羽ばたけるか。

■渡邉大樹(オリックス)
評価:がんばりましょう

 2年続けて日本一を争ったヤクルトから加入も、一軍出場はわずか1試合のみ。昨季は守備固めや代走要員として自己最多の94試合に出場したが、二軍の外野は成長途上の若手で占められ、守ったことのなかった一塁をこなしている。入団時に意気込んでいた打撃も38試合で打率.221にとどまるなど、ファームでも思ったように力を発揮できていない。持ち味である外野守備と走塁は一軍の弱点でもあるだけに惜しい。

文●藤原彬

著者プロフィール
ふじわら・あきら/1984年生まれ。『SLUGGER』編集部に2014年から3年在籍し、現在はユーティリティとして編集・執筆・校正に携わる。ツイッターIDは@Struggler_AKIRA。

 
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