楽天からFAとなり、パドレスと5年2800万ドル(約39億9000万円)で契約を結んだ松井裕樹。日本球界屈指のクローザー獲得に成功したパドレスのAJ・プレラーGMは「試合終盤のどんな場面でも投げられる投手。クローザーもできる」と期待を寄せている。
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ボールやマウンド、練習法、文化の違いなどアジャストしなければならないことは多いが、松井の場合は他の日本人選手以上に
だが、それ以上に大きなアジャストに松井は適応しなければならない。ピッチクロックだ。
2023年からMLBで導入されたピッチクロックは、投手が捕手からボールを受け取ってから、走者がいない場合は15秒、いる場合は20秒以内に投球動作に入らなければならない、というもの。違反した場合はボールが加算される。来季から、走者ありの場合は18秒に短縮される。
一方、松井は日本で最も投球間隔が長い投手として知られている。
投球から返球を受けるまでを6秒(リリースまで1.5秒、投手から捕手まで0.5秒、捕手から投手まで4秒)と仮定し、それを除いた上での投球間隔を中央値で表す「Time Equiv.」という指標がある。ざっくり言えば、ピッチクロック上での投球間隔だ。
この「Time Equiv.」で、今季の松井は走者なしの場面で21.7秒、走者ありの場面では32.2秒もかかっていた。どちらも、50投球回以上の投手では12球団ワーストだった。
▼2023「Time Equiv.」ワースト5(50投球回以上)
【走者あり】
1 松井裕樹(楽天) 21.7
2 益田直也(ロッテ) 20.3
3 島内颯太郎(広島) 15.8
4 伊勢大夢(DeNA) 15.4
5 清水昇(ヤクルト) 15.0
【走者なし】
1 松井裕樹(楽天) 32.2
2 益田直也(ロッテ) 25.3
3 伊勢大夢(DeNA) 25.3
4 高橋宏斗(中日) 24.8
5 木澤尚文(ヤクルト 24.8
試合終盤の緊迫した場面で登板することが多いリリーフ投手はとりわけ「間」を大事にする。打者との駆け引きも含め、可能な限り自分のペースで投球するためだ。だが、ピッチクロックが導入された状況では、「間」を生かした投球は事実上不可能になる。単純計算で、松井は来季からは走者なしで約7秒、走者ありの場面では14秒も短縮しなければならない。
今年3月のWBCでは、MLBと同じ公式球に対応にも苦労していた松井はもう一つの「壁」を克服しなければならないのだ。
もっとも、メジャーリーガーも昨年ピッチクロックが導入された時は同じ状況だった。松井と同じクローザーのケンリー・ジャンセン(レッドソックス)も投球間隔が長いことで有名だったが、22年と23年で「Time Equiv.」を約10秒(25.3秒→15.7秒)近く短縮させることに成功した。
決して簡単ではないが、不可能というわけでもない。松井には、この壁を乗り越えてアメリカでも実力を発揮してほしい。
※データ提供:DELTA
文●SLUGGER編集部
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ボールやマウンド、練習法、文化の違いなどアジャストしなければならないことは多いが、松井の場合は他の日本人選手以上に
だが、それ以上に大きなアジャストに松井は適応しなければならない。ピッチクロックだ。
2023年からMLBで導入されたピッチクロックは、投手が捕手からボールを受け取ってから、走者がいない場合は15秒、いる場合は20秒以内に投球動作に入らなければならない、というもの。違反した場合はボールが加算される。来季から、走者ありの場合は18秒に短縮される。
一方、松井は日本で最も投球間隔が長い投手として知られている。
投球から返球を受けるまでを6秒(リリースまで1.5秒、投手から捕手まで0.5秒、捕手から投手まで4秒)と仮定し、それを除いた上での投球間隔を中央値で表す「Time Equiv.」という指標がある。ざっくり言えば、ピッチクロック上での投球間隔だ。
この「Time Equiv.」で、今季の松井は走者なしの場面で21.7秒、走者ありの場面では32.2秒もかかっていた。どちらも、50投球回以上の投手では12球団ワーストだった。
▼2023「Time Equiv.」ワースト5(50投球回以上)
【走者あり】
1 松井裕樹(楽天) 21.7
2 益田直也(ロッテ) 20.3
3 島内颯太郎(広島) 15.8
4 伊勢大夢(DeNA) 15.4
5 清水昇(ヤクルト) 15.0
【走者なし】
1 松井裕樹(楽天) 32.2
2 益田直也(ロッテ) 25.3
3 伊勢大夢(DeNA) 25.3
4 高橋宏斗(中日) 24.8
5 木澤尚文(ヤクルト 24.8
試合終盤の緊迫した場面で登板することが多いリリーフ投手はとりわけ「間」を大事にする。打者との駆け引きも含め、可能な限り自分のペースで投球するためだ。だが、ピッチクロックが導入された状況では、「間」を生かした投球は事実上不可能になる。単純計算で、松井は来季からは走者なしで約7秒、走者ありの場面では14秒も短縮しなければならない。
今年3月のWBCでは、MLBと同じ公式球に対応にも苦労していた松井はもう一つの「壁」を克服しなければならないのだ。
もっとも、メジャーリーガーも昨年ピッチクロックが導入された時は同じ状況だった。松井と同じクローザーのケンリー・ジャンセン(レッドソックス)も投球間隔が長いことで有名だったが、22年と23年で「Time Equiv.」を約10秒(25.3秒→15.7秒)近く短縮させることに成功した。
決して簡単ではないが、不可能というわけでもない。松井には、この壁を乗り越えてアメリカでも実力を発揮してほしい。
※データ提供:DELTA
文●SLUGGER編集部
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