プロ野球

【西武】目的は経費節減? 12球団で最も遅いキャンプインの真の意味とは?「我々が危惧するのは――」

氏原英明

2024.02.18

西武を率いる松井監督。従来の形式に囚われないやり方で調整を進めている。写真:梅月智史(THE DIGEST写真部)

 事情がわからない人は"リーズナブルキャンプ"と呼んでいるのだそうだ。

 宮崎県の日南市南郷でキャンプを張っている西武は12球団で最も遅い2月6日にキャンプイン。1クール分、遅れて始まることから経費節減が目的だなどの声があるという。

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 しかし、実際、チームへは意外な声が届いていると平石洋介ヘッドコーチは話す。

「他球団から聞かれるんですよ。遅れて始めるのはどうなのかって。みんな気になっていると思いますよ。我々として危惧するのはキャンプが間延びすること。それは避けたいなって。でもウチだけでなく多くのコーチが感じているところだと思います」

 何のためのキャンプか。チームが勝つためであり、選手が成長するため。それがいつしか、練習のための練習をすることに主眼が置かれてしまうことは、日本の社会で多く起こりうる。プロ野球キャンプにおいてもそれは同じなのかもしれない。

 西武キャンプが遅れて始まるのは今年が初めてではない。昨年に引き続いての改革だが、第2、3クールを取材していて思うのは効率的に練習しようという空気が伝わってくる一方、選手たちのエンジンの回転数が鈍いというわけではない。

「3年目の僕がいうのも生意気かもしれないんですけど、開幕がそこまで早いわけじゃないし、別に毎年、同じ日に始める必要はないんじゃないかなって思います」

 そう語ったのは中継ぎ投手のひとり、佐藤隼輔だった。第2クールの3日目、その佐藤は1人、通常と別メニューをこなして汗を流した。別メニューといっても、故障をしたのではない。自身のピッチングを作りあげていく上で大事にしていているメニューを取り入れたのだ。

「1年目の秋くらいの時に内海(哲也/現巨人投手コーチ)さんに教えてもらったんです。下半身を上手く使うのにいい練習になる。僕はどうしても上半身が強いので、上だけでいってしまうところがあるんですよ。それがこの練習をすることでリズムが作れるというか。このキャンプでは今日が初めてですけど、いい感じにはなっているなと思うんですよ」

 佐藤が特別に取り入れているのが一塁ノックを受けてそこから三塁へ送球するという練習だ。この日は三塁ベース上に十亀剣スカウトを立たせてノックを受けていた。

 キャンプが遅れて始まることの意味はこうした選手の姿勢にも影響している。各球団がキャンプインしている中で個々が集合までに計画を立てて自主トレに励みシーズンに合わせていく。練習メニューを用意するからそれに沿ったことをやるだけにはならず、選手それぞれを自立させている。昨今ではパーソナルトレーナーと契約する選手も多いというのもあるが、時間を与えることで選手は考えるようになり、それが練習の質を向上させる要因にもつながっているのだ
 
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効率的な練習の雰囲気にはみんなが一体となる空気感さえ見える