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“水原問題”再発防止のためにどんな対策が必要なのか。選手の「お抱えスタッフ」の身辺調査や監視が重要<SLUGGER>

古本尚樹

2024.03.30

ドジャース移籍早々、思わぬ災難に見舞われた大谷。球団側も危機管理意識を強く持つべきとの声も少なくない。(C)Getty Images

ドジャース移籍早々、思わぬ災難に見舞われた大谷。球団側も危機管理意識を強く持つべきとの声も少なくない。(C)Getty Images

 メジャーリーグや海外サッカーチームへの日本人の移籍が珍しくなくなった今日、「外国人」である日本人が、「お抱え」スタッフをチームに入れることが慣例化している。その役割は通訳、トレーナー、日常生活の世話など多岐にわたり、これらは長年の付き合いからの信用がなくては困難であることは理解できる。だが、大谷翔平選手(ドジャース)の通訳を務めていた水原元一平氏の違法賭博や窃盗に関する疑いは、こうした流れに再考を促すことになる。

【関連記事】水原通訳の違法賭博問題で浮上した「プロアスリートの危機管理問題」。選手の行動を監視・監督する第三者機関が必要<SLUGGER>

 そもそも、選手が必要とする人材と、チームが必要とする人材は必ずしも一致しない。現状では、チーム側はスター選手の周囲を固めるスタッフや関係者の「質」を詳しくは吟味せず、選手の意向に沿った形に収めているのが現状だ。選手が望む形のサポート認めるという考えが前提にあるからだろう。しかし実際には、そうしたスタッフや関係者がチームの運営にも関わることにもなる。それだけに、本来は球団が責任をもってスタッフや関係者の身辺調査を行う必要がある。学歴や家族内を含めた犯罪歴も含めてだ。身辺調査を経て入団を認めた後でも、交友関係などは継続して「監視」する必要がある。

 また、入団前の段階で、スター選手が必要とするスタッフに関して、その者が選手個人のみならず、チーム全体にどういう効果を与えるかを考慮すべきであるだが、この部分が欠落している。水原元通訳の賭博歴は、何も最近になって始まったわけではないはずだ。賭博の常習性と中毒性はギャンブルの特性でもある。素行調査をしっかりと行っていれば、賭博への関与も前もって把握できたかもしれない。
 さらに言うならば、大谷選手自身が元通訳の素行を把握していなかったのも課題だ。これは結果論だが、長年の付き合いの中でも分からないでは済まされないのが、プロチームへ人材の参画における問題である。現状、あまりに緩すぎる。選手がチームに加えたいと思う人材への調査がまず最優先すべき対応、入団後の行動監視は2番目、すなわちセーフティネットの立ち位置で、それが今は確立されていない。本来はチェックシートを設けておいて、定期的に覆面調査を行う必要性があると思う。

 一方で、スタッフの業務の範疇が明確でないという問題もある。「何でもします」的な便利屋のような扱いをさせていることが多い。一人で複数の仕事をこなし、特に競技に関する業務から離れ、選手のプライベートにまで関わる傾向があるのは改善すべきだろう。業務の範囲や規範を明確にする必要がある。

 例えば、通訳業務のみで、選手のプライベートに関わることはさせない。まして預金口座の管理等は一切関わらせない。選手個人の預金口座や金銭に関する事柄は、本来チームスタッフが関わるべきものではない。ただし、スター選手の預金に関しては常に危険が潜むので、選手個人のみならずチームとしても、その安全な運用については、何らかのガイドラインを設ける必要がある。賭博以外にも株の運用など、素人が手を出すべきではないことが多々ある。こうしたことに関わらないようにするためには、チームやリーグがある程度ガードすべきだろう。
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