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全打席マン振りの“ブンブン丸”でも優れた選球眼で出塁能力はイチロー並み!ドジャース打線を支える大砲マンシーの魅力<SLUGGER>

久保田市郎(SLUGGER編集長)

2024.04.02

過去6年間で放った175本塁打は大谷以上。低打率だが、パワーと選球眼は間違いなく一流だ。(C)Getty Images

過去6年間で放った175本塁打は大谷以上。低打率だが、パワーと選球眼は間違いなく一流だ。(C)Getty Images

「見たか! これがマンシーだ!」――テレビ画面越しに思わずそう叫びそうになった。

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 4月1日(現地)、マックス・マンシー(ドジャース)がカーディナルス戦の8回に逆転決勝2ランを放った場面だ。6回表終了時点まで0対4とリードされていたドジャースだったが、その裏に2点を返すと、8回にテオスカー・ヘルナンデスの本塁打で1点差。さらに1死一塁という場面で打席に入ったのが、6回から途中出場していたマンシーだった。

 カウント2ボール1ストライクからの4球目、左腕ジョン・キングが投じた内角寄りの甘いスライダーを一閃すると、打球は右翼スタンドへ一直線。ドジャー・スタジアムは大興奮に包まれた。

 大谷翔平のドジャース入団が決まってからというもの、一部のMLBのファンの間では密かにこんな声がささやかれていた。「マンシーって、日本のファンや解説者から批判されがちなタイプだよね?」。

 打席では常にフルスウィングの一発狙い。当然、三振は多く、打率もここ2年は2割そこそこ。がっしり体型で、三塁守備での動きも決して優雅とは言い難い。要は、「細かい野球」を好む日本のファンからすると、あまりにも隙だらけで大味に見えてしまうのだ。

 実際、韓国での開幕シリーズでは、マンシーの悪い部分での特徴を多くの日本のファンが目撃することになった。2試合で9打数3安打を記録したものの、5三振。しかも、走者を得点圏に置いた場面で“マン振り”して凡退する場面が目立った。さらに、スプリング・トレーニングで猛練習を積んだはずの守備でも凡ミスを連発。日本のファンへの第一印象は決して芳しいものではなかったはずだ。

 だが、本当に「それだけ」の選手だったら、強豪ドジャースでずっとレギュラーを張り続けることはできない。
 
 マンシーには2つの大きな武器がある。1つは言わずと知れたパワー。18年のドジャース加入以降、年間35本塁打以上を4度も記録。過去6年間で放った175本塁打はマニー・マチャド(パドレス)と並んでMLB7位タイで、これは大谷(171本)をも上回る数字だ。

 そしてもう1つは、MLBでも屈指の選球眼だ。例年、15%前後の四球率を記録しており、これはMLB平均(8~9%)を大きく上回る。それもあって、メジャー通算打率は.228ながら出塁率は.351(4月1日時点)に達する。ちなみに、イチローはメジャー通算打率.311に対して出塁率.355。つまりマンシーは、出塁能力に関してはあの稀代の安打製造機に引けを取らない出塁能力を誇っているのだ。

 球界屈指の辣腕で知られるドジャースのアンドリュー・フリードマン編成総責任者がマンシーをいたく気に入っている(入団以来、すでに3度も延長契約を交わしている)のには、十分な根拠があるというわけだ。

 実は苦労人でもある。17年開幕直前にアスレティックスを解雇された後、故郷テキサスに戻って母校の高校のグラウンドで父とマンツーマンで打撃練習に励みながらセカンドチャンスを待った。1ヵ月後にマイナー契約でドジャースに拾われ、翌年から「フライボール革命」の波に乗って一気にブレイクを果たした。

 今後もマンシーはフルスウィングを続け、三振の山を築くだろう。シーズン打率が2割5分を超えることも、おそらくないだろう。同時に、しっかり四球を選んで出塁し、年間30本前後は目の覚めるような一発を放ち、チームに貢献するだろう。そして、1日のカーディナルス戦がまさにそうだったように、一振りで試合を決めるシーンも何度となく見せてくれるに違いない。

 そんなマンシーを、どうか日本のファンも応援してほしい。

文●久保田市郎(SLUGGER編集長)

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