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最速166キロの剛速球で9イニング平均18奪三振!MLBの新・速球男ミラーは1型糖尿病と闘いながらマウンドに立つ「不屈の男」<SLUGGER>

藤原彬

2024.04.30

開幕から快投を続けるミラー。早くもチームの顔となりつつある。(C)Getty Images

開幕から快投を続けるミラー。早くもチームの顔となりつつある。(C)Getty Images

“球界最弱軍団”のはずだったアスレティックスで、メジャー2年目のメイソン・ミラー(アスレティックス)の豪快な投球が話題を集めている。“ピッチング・ニンジャ”として知られる投球分析家ロブ・フリードマンいわく「球界で最もシビれる(Electric)な投手」。今季から抑えを任されたばかりだが、早くも「球界最高のクローザー」との声すら聞こえてきた。

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 そうした表現も、ミラーの投球を見ればすぐに誇大広告ではないと分かる。何しろ、今季の4シームの平均球速は何と100.7マイル。もちろんこれはMLBトップで、100マイル超え86球は2位に倍近い大差をつけている。決め球の鋭いスライダーともども驚異の空振り/スウィング率50.0%に達し、ここまで12.1投球回で25奪三振。9イニング平均で18個以上の三振を奪っている計算だ。

 圧巻は4月22日のヤンキース戦で、初のヤンキー・スタジアムでアンソニー・ボルピー、フアン・ソト、アーロン・ジャッジの1~3番からいずれも4シームで3者三振。ソトを仕留めた103.3マイルは三振を奪った球では今季MLB最速で、このランキングでは1~6位をミラーが独占している。

 そんな豪快な投球からは想像もつかないが、実はミラーは1型糖尿病と戦いながらマウンドに立ち続けている。
 ウェインズバーグ大2年時に診断を受け、体重が81kgから68kgに激減。大学自体もNCAA3部の無名校で、当時はドラフト指名すらおぼつかない状況だった。

 だが、病気が判明してから適切な食事と筋力トレーニングに取り組み、体重を100kgまで増やすと、速球の球速が80マイル台後半から10マイル以上も上昇。金融学の学士号を取得後に転校したガードナー・ウェブ大では、スカウトが多く集まるNCAA1部リーグの試合で100マイルを計測するようになり、2021年ドラフト3巡目指名をつかみ取った。

 プロでも「災い転じて福となす」野球人生が待っていた。メジャーデビューを果たした昨季、3先発目の5月2日にマリナーズ打線を7イニング無安打無失点の快投と力を示したが、直後に軽度の右肘尺側側副靱帯捻挫により長期離脱。健康面への考慮もあって配置転換されたブルペンで見事にブレイクを果たした。

 開幕から11勝17敗と意外な健闘を見せているチームの「顔」となりつつあるミラーだが、現在も10日ごとに血糖値を測定し、食事と就寝前にはインスリン注射を受けている。低迷が続くアスレティックスファンの、そして同じ病に苦しむ人たちの“希望の光”として今後も活躍が期待される。

文●藤原彬

著者プロフィール
ふじわら・あきら/1984年生まれ。『SLUGGER』編集部に2014年から3年在籍し、現在はユーティリティとして編集・執筆・校正に携わる。X(旧ツイッター)IDは@Struggler_AKIRA。

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