プロ野球

西武が樹立した延長15連敗のワースト記録。その要因は防御率リーグワーストのリリーフ陣ではなく……?<SLUGGER>

氏原英明

2024.04.30

サヨナラ勝ちして喜ぶソフトバンクナインを背にベンチに引き上げるアブレイユ。リリーフ陣が打たれている、というのが一見西武不振の要因に見えるが……? 写真:産経新聞社

 その連敗は15まで伸びた。

 パ・リーグ最下位に沈む西武が、4月27日から29日のソフトバンク3連戦で、何と3試合連続でサヨナラ負けを喫するという珍事が起きた。特に27~28日は延長戦で惜敗。延長15連敗は2リーグ制ワースト記録だそうだ。

 なぜ、西武は延長で勝てないのだろうか。

 これは現在のチーム事情と大きく関係している。

 緊喫の課題は攻撃力にある。

 今季の西武の戦いぶりを整理していくと、実に僅差のゲームが多い。勝っていても負けていも接戦続き。これまでの8勝のうち、セーブシチュエーションにならない4点差以上をつけて勝利したのは2勝しかない。同じように負け試合でも、4失点以上の大敗は16敗のうち3試合しかない。これは上位3チームとほとんど変わらない。
 
 つまり、投手陣は善戦している。12球団屈指とも言われる先発陣の防御率はリーグトップだ。しかし、リリーフの防御率はリーグ最低。この事実だけを伝えると「救援陣の質が低い」と思えてくるが、実はそう簡単な問題ではない。

 西武の救援陣はアブレイユをクローザーに置き、セットアッパーは右肘の違和感で24日に離脱するまで甲斐野央が務めていた。この二人を中心にして、防御率1点台のサウスポー佐藤隼輔、開幕から状態のいい本田圭佑、21年の新人王・水上由伸。現役ドラフトで加入の中村祐太、増田達至、平井克典のベテラン勢。開幕当初は育成上がりの豆田泰志、ルーキーの糸川亮太がブルペンの陣容を組んでいた。

 分厚いメンバーに見えたが、開幕してからのポジションは使いながら見定めていくという方針が裏目に出た。これ自体は西武に限らず、どのチームも同じ方針だが、西武の場合は勝ち試合も負け試合も僅差。つまり、多くの試合が勝ち継投に近いシチュエーションでの登板を強いられるのだ。

 例えば、豆田やルーキーの糸川、中村らはストレスのかからないところで登板して、少しずつ経験を重ねていく。そこで好投して信頼を得ていく。通常、リリーバーの序列はそうやって決まっていく。

 しかし、開幕から接戦が続いたために、そうした経験をさせる機会が十分に得られなかった。その証拠に、開幕シリーズでは3戦目にプロ初登板となった糸川がサヨナラ負けを献上している。
 
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延長継投の難しさ