佐々木麟太郎のスタンフォード入学に伴い、日本でもアメリカの大学野球への関心が高まるに違いない。そこで今回は、日本とは違うアメリカ大学野球ならではの特徴を3つ紹介しよう。
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【金属バットの使用が認められている】
YouTubeなどでアメリカ大学野球のハイライト動画を見ると「カキーン」と甲高く響く打球音に気付く。日本と違い、NCAA(全米大学体育協会)では金属バットの使用が許されているのだ。
アメリカでは1980年代に金属バットの技術革新が進み、85年にはのちにロッテでもプレーしたピート・インカビリア(オクラホマ州立大)が48本塁打というNCAA1部リーグのシーズン記録を樹立した。この記録は今に至るまで、誰にも破られていない。
だが、高反発の金属バットから生み出される打球による事故が相次いだこともあり、2011年から打球の反発係数規制を設ける規格を導入。12年には、一体成型の無垢材以外の材料で作られたバットを使用するためにはNCAA認証センターで性能テストで認証を受けなくてはならないこととなった。いわゆる低反発バットの導入である。
この規制により本塁打は一時減少したが、近年は怪力自慢のスラッガーが続々台頭している。22年に22年テキサス大のイアン・メレンデス(現ダイヤモンドバックス)が32本塁打を放ち、低反発バット導入以降の新記録を樹立。すると、23年にはフロリダ大のジャック・キャグリオーンが33本ですぐさま追い抜き、さらに今季はチャーリー・コンドン(ジョージア大)が37本でまたも記録を更新した。
また、キャグリオーンが35本、クリスチャン・ムーア(テネシー大)が33本と乱れ打ち状態で、「ホームラン時代」が到来している。この中で、佐々木がどれだけ活躍できるか注目される。
【投打二刀流は当たり前で専門の賞も】
23年に年間33本塁打を放って低反発バット導入以降の新記録を樹立(当時)したキャグリオーンは、今季も30本の大台をクリアしてNCAA史上2人目の2年連続30ホーマーを達成した。彼は、マウンドでは100マイル近い剛速球を投じる二刀流選手でもあり、“ジャックタニ"という異名まで付いている。だが、彼が大谷のようにユニコーン的な現実離れした存在かというと、アメリカ大学野球界では決してそうではない。 投手兼一塁手、あるいは外野手として活躍する二刀流選手は多く、最も優れた二刀流選手に贈られる「ジョン・オルルード賞」というアウォードすらあるほどだ。ちなみに、22年にこのジョン・オルルード賞を受賞したのは、昨年のドラフト全体1位指名でプロ入りし、目下メジャーを席捲中のポール・スキーンズ(パイレーツ)である。
他にも、現在、パドレスで活躍中のジェイク・クローネンワースはミシガン大時代に遊撃手兼クローザーを務め、カーディナルスの好打者アレック・バールソンも、イーストカロライナ大時代は一塁手/外野手/投手として幅広く活躍していた。
大半の選手はプロ入り後に野手/投手どちらかに絞るが、アメリカでは少なくとも大学までは「打って投げて」が当たり前の世界なのだ。
【出場機会を求めて他に大学へ編入】
もう一つ、日本では珍しい事象として編入がある。そもそも、アメリカの大学は日本と比べて大学間での単位互換制度が広く浸透しており、他大学への編入は野球選手に限らず珍しくない。高卒時に学力が不足していれば、まず短大(2年制)に入学し、3年次から4年制大学への編入を目指すルートもある。
もちろん、野球が理由での編入も多い。22年ドラフトで大学球界屈指の強打者と評価されたジェイコブ・ベリー(マーリンズ)は最初はアリゾナ大に入学したが、1年修了時にジェイ・ジョンソン監督が強豪ルイジアナ州立大(LSU)に引き抜かれると、恩師の後を追って自身もLSUへ移った。
今年度のドラフト注目選手の一人でもあるテキサス農工大のブレイデン・モンゴメリーは、2年次までスタンフォード大で外野主兼リリーフの二刀流として活躍していたが、今季から故郷ミシシッピ州に近い場所にある大学に編入して評価を上げた。短大も含め3校以上渡り歩く選手も中にはおり、自分の目標に向かって最善のルートを選ぶ自由があるというのもアメリカらしい。
文●城ノ井道人
【著者プロフィール】
しろのいみちと。会社勤めの後、渡米してMLB記者として全米を飛び回る。。日米問わず若手有望株への造詣が深く、仲間内で「日本版ファンタジーリーグ」を毎年開催し、次代のスター発掘に余念がない。
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【金属バットの使用が認められている】
YouTubeなどでアメリカ大学野球のハイライト動画を見ると「カキーン」と甲高く響く打球音に気付く。日本と違い、NCAA(全米大学体育協会)では金属バットの使用が許されているのだ。
アメリカでは1980年代に金属バットの技術革新が進み、85年にはのちにロッテでもプレーしたピート・インカビリア(オクラホマ州立大)が48本塁打というNCAA1部リーグのシーズン記録を樹立した。この記録は今に至るまで、誰にも破られていない。
だが、高反発の金属バットから生み出される打球による事故が相次いだこともあり、2011年から打球の反発係数規制を設ける規格を導入。12年には、一体成型の無垢材以外の材料で作られたバットを使用するためにはNCAA認証センターで性能テストで認証を受けなくてはならないこととなった。いわゆる低反発バットの導入である。
この規制により本塁打は一時減少したが、近年は怪力自慢のスラッガーが続々台頭している。22年に22年テキサス大のイアン・メレンデス(現ダイヤモンドバックス)が32本塁打を放ち、低反発バット導入以降の新記録を樹立。すると、23年にはフロリダ大のジャック・キャグリオーンが33本ですぐさま追い抜き、さらに今季はチャーリー・コンドン(ジョージア大)が37本でまたも記録を更新した。
また、キャグリオーンが35本、クリスチャン・ムーア(テネシー大)が33本と乱れ打ち状態で、「ホームラン時代」が到来している。この中で、佐々木がどれだけ活躍できるか注目される。
【投打二刀流は当たり前で専門の賞も】
23年に年間33本塁打を放って低反発バット導入以降の新記録を樹立(当時)したキャグリオーンは、今季も30本の大台をクリアしてNCAA史上2人目の2年連続30ホーマーを達成した。彼は、マウンドでは100マイル近い剛速球を投じる二刀流選手でもあり、“ジャックタニ"という異名まで付いている。だが、彼が大谷のようにユニコーン的な現実離れした存在かというと、アメリカ大学野球界では決してそうではない。 投手兼一塁手、あるいは外野手として活躍する二刀流選手は多く、最も優れた二刀流選手に贈られる「ジョン・オルルード賞」というアウォードすらあるほどだ。ちなみに、22年にこのジョン・オルルード賞を受賞したのは、昨年のドラフト全体1位指名でプロ入りし、目下メジャーを席捲中のポール・スキーンズ(パイレーツ)である。
他にも、現在、パドレスで活躍中のジェイク・クローネンワースはミシガン大時代に遊撃手兼クローザーを務め、カーディナルスの好打者アレック・バールソンも、イーストカロライナ大時代は一塁手/外野手/投手として幅広く活躍していた。
大半の選手はプロ入り後に野手/投手どちらかに絞るが、アメリカでは少なくとも大学までは「打って投げて」が当たり前の世界なのだ。
【出場機会を求めて他に大学へ編入】
もう一つ、日本では珍しい事象として編入がある。そもそも、アメリカの大学は日本と比べて大学間での単位互換制度が広く浸透しており、他大学への編入は野球選手に限らず珍しくない。高卒時に学力が不足していれば、まず短大(2年制)に入学し、3年次から4年制大学への編入を目指すルートもある。
もちろん、野球が理由での編入も多い。22年ドラフトで大学球界屈指の強打者と評価されたジェイコブ・ベリー(マーリンズ)は最初はアリゾナ大に入学したが、1年修了時にジェイ・ジョンソン監督が強豪ルイジアナ州立大(LSU)に引き抜かれると、恩師の後を追って自身もLSUへ移った。
今年度のドラフト注目選手の一人でもあるテキサス農工大のブレイデン・モンゴメリーは、2年次までスタンフォード大で外野主兼リリーフの二刀流として活躍していたが、今季から故郷ミシシッピ州に近い場所にある大学に編入して評価を上げた。短大も含め3校以上渡り歩く選手も中にはおり、自分の目標に向かって最善のルートを選ぶ自由があるというのもアメリカらしい。
文●城ノ井道人
【著者プロフィール】
しろのいみちと。会社勤めの後、渡米してMLB記者として全米を飛び回る。。日米問わず若手有望株への造詣が深く、仲間内で「日本版ファンタジーリーグ」を毎年開催し、次代のスター発掘に余念がない。
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