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新加入のスラッガーがもたらした意外な効果?現地敏腕記者が指摘する「地球上で最も危険な打者」アーロン・ジャッジの猛打の秘密<SLUGGER>

藤原彬

2024.07.08

オールスターを前に30本塁打を悠々クリアしたジャッジ。2年前の猛打を彷彿とさせるペースでアーチを量産している。(C)Getty Images

 ホームランを打たせれば、やはりこの男の右に出る者はいない。そう思わせる勢いで、アーロン・ジャッジ(ヤンキース)がアーチを量産している。32本塁打、83打点、OPS1.118など複数の打撃部門でメジャートップ(現地7月6日終了時点)。10.03打数に1本塁打のペースは、ア・リーグ新記録の62本を記録した22年(9.2打数に1本)に迫る勢いだ。

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 規格外のその打棒の秘密を、『スポーツ・イラストレイテッド』のトム・バードゥッチ記者が「アーロン・ジャッジが球界に革命を起こしている7つの方法」として解き明かしている。その中でも、特に興味深いポイントを紹介しよう(※当該記事内で紹介されている数字は7月2日時点)。

 まず、今季のジャッジは例年にないほどストライクゾーン内で勝負されている。2018年以降はほぼ45%前後だった被ストライク投球率が、今季は48.6%(※)でキャリア最高値だ。なぜ、球界で最も警戒するべき打者にこのような現象が起きているのか。その要因として、今季から新加入したフアン・ソトの存在が挙げられている。

 言わずと知れた球界最高の出塁マシーンは、ヤンキースではジャッジの前の2番を打つことが多い。ソトが塁に出ることで、相手投手はジャッジと勝負せざるをを得ない。バードゥッチは、昨季はジャッジが走者を置いて打席に入ったケースが全体の39%だったのに対し、今季は49%にまで上昇していることを指摘している。
 
 一方で興味深いのは「ジャッジには(打線の後ろを打つ打者からの)援護がない」とも指摘されている点だ。今季のヤンキースの4番打者はOPS.590(※)で、これは1920年以降でMLBワースト4位。バードゥッチは「打順のプロテクションは常に誤解されてきた。打者の後ろよりも前で誰が打つかの方が重要だ」と結論付けている。

 加えて、ジャッジ個人にも成長が見られる。ボール球スウィング率19.5%(※)はキャリアベストの数字で、打つべきボールとそうでないボールの見極めは冴えに冴えている。また、苦手も克服していて、数年前はシンカーを主体とする右の救援投手の横の揺さぶりに脆さを見せていたが、今季は内角球も苦にせず快打を見舞っている。

 今季は全体的に投高打低である点も忘れてはならない。MLB全体の打率.242(※)は史上4番目に低く、特に外野手の打率.239(※)やOPS.705(※)は1969年以降でワーストの数字だから、ことさらジャッジの貢献度は際立つ。この調子なら3度目の50本塁打超えでの本塁打王獲得どころか、自身が保持するア・リーグ記録も視界に入りそうだ。32歳と心身ともに充実する「地球上で最も危険な打者」(マイク・ペティエロ/MLB.com)は、今秋に再び球史へ名を残すためのチャレンジへ身を投じるだろうか。

著者プロフィール
ふじわら・あきら/1984年生まれ。『SLUGGER』編集部に2014年から3年在籍し、現在はユーティリティとして編集・執筆・校正に携わる。X(旧ツイッター)IDは@Struggler_AKIRA。

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