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MLB

ハイパフォーマンスを続ける大谷翔平が初のポストシーズン進出を目指して後半戦へ!「三冠王」「40-40」達成の可能性も

出野哲也

2024.07.23

上々の前半戦を過ごした大谷。「ヒリヒリした」9月、10月へ向けて気持ちを新たにしているに違いない。(C)Getty Images

上々の前半戦を過ごした大谷。「ヒリヒリした」9月、10月へ向けて気持ちを新たにしているに違いない。(C)Getty Images

 ドジャースにとっては予想外の展開、計算外の事態に見舞われ続けた前半戦だった。まずは韓国開幕シリーズの最中に、大谷翔平の元通訳による違法スポーツ賭博スキャンダルが発生。普通の選手だったら平常心で試合に臨めるとは思えないほどの大騒動だったが、さすがは7億ドルの男、パフォーマンスに影響を及ぼすことはまったくなかった。

【動画】観客もチームメイトも唖然!大谷翔平、シーズン30号本塁打はあわや場外の超特大弾

 開幕直後こそなかなか調子は上がらず初、本塁打は4月3日、メジャー移籍後では一番遅い9試合/41打席目だったが、その後は順風満帆と言っていい。とりわけ、打席に入った時にバットを置いてスタンスの位置を確認するようにした6月中旬以降はホームランを量産し、あっという間に他の打者を置き去りにした。前半戦終了時点でリーグトップの29ホーマー、自己初の50本台も夢ではないハイペースである。

 今季はこれまでになくヒットもよく出ていて、打率.316と117安打は2位。69打点も8点差はつけられているが3位とあって、三冠王の可能性も十分ある。そしてOPS1.036もトップで、2年連続3度目のMVP受賞も十分ありうる。守備につかないDHのMVPは過去に例がなく、大谷といえども今季の受賞は難しいのでは……というのが開幕前の大方の見方だった。これに関しては嬉しい誤算と言えるだろう。

 序盤戦で大谷以上に活躍し、スタートダッシュに貢献したのはムーキー・ベッツだった。右翼から二塁にコンバートされる予定だった今季は、守備難のギャビン・ラックスと入れ替わる格好で、あまり経験のない遊撃手として開幕。にもかかわらず3・4月は打率.368、23打点、OPS1.101で月間MVPを受賞した。しかしながら、6月16日のロイヤルズ戦で左手首に死球を受けて骨折、全治6~8週間と診断されてしまった。

 野手では他に大砲マックス・マンシーも脇腹を痛め、当初の予定よりも離脱期間が長引いており、三塁に大きな穴が開いている。ラックスやジェームズ・アウトマンの不振も誤算で、下位打線の得点力不足は悩みの種だ。ただ、それでもフレディ・フリーマンは相変わらず安定した成績を残し、ウィル・スミスも自己最高のシーズンを送るなどして、得点数宇はリーグ2位。ベッツとマンシーが復帰して完全体となれば、野手陣のてこ入れは必要ない。
 一方、投手陣には不安要素が多い。開幕前から先発の駒不足が指摘され、ウォーカー・ビューラーとクレイトン・カーショウが復帰するまでは我慢の戦いになる、とは思われていた。だが5月に戻ってきたビューラーは8試合で1勝4敗、防御率5.84と大乱調。股関節の炎症により再び故障者リスト入りしてしまった。

 12年契約で入団した山本由伸も6月15日、ロイヤルズ戦の途中で降板。右肩腱板損傷と診断され、長期離脱となっている。デビュー戦の3月21日パドレス戦では5失点で1回KOと大荒れだったものの、その後は13試合で6勝1敗、防御率2.34と額面通りの投球を見せていただけに残念だった。

 さらにはリーグトップの奪三振数を誇っていたタイラー・グラスノナウも、腰痛で7月9日に故障者リスト入り。幸い重症ではなさそうだが、翌10日には若手速球派のボビー・ミラーも抜けてしまった。開幕当初は5番手扱いだったギャビン・ストーンがチームトップの9勝、またランドン・ナックも7先発で防御率2点台と好投して、どうにか崩壊状態に至るのを防いでいる格好だ。

 ブルペンも先発に負けず劣らず故障者だらけ。クローザーのエバン・フィリップスはハムストリングの負傷で5月上旬から1ヵ月離脱し、復帰後もいまひとつ精彩を欠いている。ジョー・ケリー、ライアン・ブレイジャーの両ベテランも不在。それでもなおリーグ3位の防御率を記録しているは層の厚さの証明だが、さすがにトレードによる補強は必要だろう。

 具体的には、ア・リーグで奪三振数トップのギャレット・クローシェイ(ホワイトソックス)、タリク・スクーバル(タイガース)、菊池雄星(ブルージェイズ)の名前が挙げられている。

 これほど誤算だらけでも、2位パドレスにゲーム差をつけ、ナ・リーグ西地区首位を独走している点だけは想定通りだ。地区内の他球団の戦いぶりを考えても、よほどのことがない限りポストシーズン進出は固いと思われる。エンジェルス時代とは違って、今年は10月に入っても大谷の活躍を見ることができそうだ。

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文●出野哲也

【著者プロフィール】
いでの・てつや。1970年生まれ。『スラッガー』で「ダークサイドMLB――“裏歴史の主人公たち”」を連載中。NBA専門誌『ダンクシュート』にも寄稿。著書に『メジャー・リーグ球団史』『プロ野球ドラフト総検証1965-』(いずれも言視舎)。

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