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移籍市場最高の先発投手とゴールドグラブ4度の名手獲得に成功。少ない犠牲で戦力を向上させたドジャースの“トレード巧者”ぶり<SLUGGER>

城ノ井道人

2024.08.01

19年にはサイ・ヤング賞投票4位に入ったフラハティ。今季の好投は当時を上回る勢いだ。(C)Getty Images

 2021年夏を思い起こさせるフィニッシュだった。トレード期限の東部時間7月30日午後6時を回った直後、最後の大きな取引成立のニュースが発信された。「ドジャースがタイガースからジャック・フラハティを獲得」――まさにデッドライン直前で、ドジャースは今夏トレード市場で最高の投手を獲得することに成功したのだ。

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 3年前のトレード・デッドラインでは、目玉だったマックス・シャーザーのパドレス入りがほぼ決定との一報が出ながらドジャースがトレイ・ターナーを含めた大型トレードを成立させて地区ライバルに競り勝った。今夏も直前までパドレスやヤンキースなどが獲得戦に乗り出していた中、最後の最後でドジャースが奪取に成功。再びフロント陣の手腕を見せつけた形だ。

 今夏のドジャースの最大の補強ポイントは、故障者が相次いだ先発投手だった。山本由伸は復帰時期未定で、ウォーカー・ビューラーはトミー・ジョン手術明けで本調子が出ないまま故障者リスト入り。ボビー・ミラーも2年目のジンクスに苦しんでいる。大谷翔平らを獲得し、「世界一か失敗か」と周囲の期待が今まで以上に高まっている中、ドジャースには単なる穴埋め要員ではなく、ポストシーズンでも戦力となる先発投手が必要だった。

 そこで浮上した獲得候補が、ア・リーグのサイ・ヤング賞レースでトップを走るタリク・スクーバル(タイガース)、同じ左腕で桁外れの三振奪取能力を誇るギャレット・クロ―シェイ(ホワイトソックス)だった。
 2人とも、エース級の実力に加えて2026年まで保有できるため非常に高い対価が要求されることは明らかだった。特に、スクーバル獲得には2022年にパドレスがナショナルズからフアン・ソトを獲得した時と同規模のパッケージ(球団のトップ10有望株から4人。うち2人が全体のトップ100入り+α)が必要と考えられた。このため他球団も獲得に及び腰となり、デッドライン直前には放出はなさそうとの空気が濃くなっていた。

 スクーバルよりはハードルが低いクローシェイについては、ドジャース以外にパドレス、フィリーズ、ブレーブス、オリオールズ、ヤンキース、レッドソックスなどが熱心に獲得の可能性を探っていた。ところがそのクローシェイも①少なくとも今季は先発しかやりたくない、②10月に投げる前に移籍先と長期契約を結びたい という要求を突きつけたと報道され、一気にトーンダウン。結局、トレードは成立しないまま終わった。

 そうして、今夏のトレード市場でトップランクに浮上したのが、フラハティ(タイガースだった。カーディナルス時代の19年にサイ・ヤング賞投票4位に入るも、翌年以降は故障続きで成績も停滞。だが、1年契約でタイガース入りした今季は18先発で防御率2.95、
奪三振率11.22、与四球率1.60と19年以上の好成績で一気にトレード市場の注目株となっていた。