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【甲子園熱戦レポート│2日目】「交代させようと思う場面がなかった」名将・西谷監督も唸った2年生右腕の快投が示す大阪桐蔭の「分厚い投手力」<SLUGGER>

氏原英明

2024.08.08

2年生とは思えない安定感抜群の投球で散発4安打完封勝利を挙げた中野。西谷監督からの信頼に見事応えた。写真:THE DIGEST写真部

 あわやマダックス――大阪桐蔭の背番号「11」中野大虎が初戦の興南戦の先発を任され、9回4安打の完封勝利。107球にまとめる快投劇を見せて、2回戦進出に貢献した。

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 やはり中野を選んだか。先発投手の発表を聞いた時の印象だ。

 強打で知られる大阪桐蔭だが、今年のチームが何より充実しているのが投手陣だ。エースナンバーを背負う平嶋桂知を中心、2年生にして150キロ超えの右腕森陽樹、経験豊富な南陽人など、それぞれタイプの違ったポテンシャルの高い投手を6人も抱えている。

 そんな中にあって、この日先発した中野は大阪桐蔭を支える投手だ。気持ちが強い一方、マウンドでは大崩れしない。コントロール良く投げることができ、リズムとテンポを持ち味としている。投球以外の動作にも長けている。強い時の大阪桐蔭には必ずいるタイプの投手だ。

 藤浪晋太郎(現メッツ)を中心に春夏連覇を果たした当時の澤田圭佑(現ロッテ)が代表例で、西谷浩一監督も「藤浪が崩れたら澤田がいるという安心感があり、中野も同じですね」と全幅の信頼を寄せている。

 この日は1回戦屈指の好カードとして注目度も高かった。ともに春夏連覇の実績を誇り、攻守にレベルの高い野球をする。タレントが揃っているだけではなく、緻密な戦略も光る。怖いのは1点を争う、胃がキリキリするような僅差のゲーム展開だ。何より先に得点を奪われると厳しい展開になることが予想された。だからこそ、中野のようなタイプは必要だった。
「大阪大会の準決勝で対戦した履正社が今年は足を使ってくるチームでした。興南は沖縄のチームで足も絡ませてくる。履正社と似ているところがあったので、履正社戦と同じような感覚で臨んだらいいのかなと。それも含めて中野の先発がいいと思いました」(西谷監督)

 豪速球が持ち味の森や総合力の高い平嶋という選択もあった中で中野を選んだのも、そうした神経戦を睨んでのことだった。

 1回表、中野は先頭打者を内野安打で出塁させるも、バントを処理すると二塁で封殺。後続をしっかりと抑えた。3回表も先頭打者を出したものの、バント失敗の後の打者を併殺打に打ち取り、相手に付け入る隙を与えなかった。

 興南が展開したい小技を駆使しての攻撃を封じていたから、試合の流れは次第次第に大阪桐蔭へと向いていた。

 そんな中、大阪桐蔭が3回裏に3点を先取した。

 先頭の岡江伸英が右翼前安打で出塁。1死後、9番の中野が四球で歩くと、1番の吉田翔輝が右中間へ走者一掃のタイムリー三塁打を放って2点を先取した。続く宮本ら楽久にも適時打が出て、好投手と評判だった相手エースの田崎颯士を攻略した。
 
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「中野の対応力はチームの武器になると思います」