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【甲子園熱戦レポート│3日目】「ここからやり直さなきゃいけない」初出場の新潟産大付に逆転負けを喫した花咲徳栄・岩井監督の新たな誓い<SLUGGER>

氏原英明

2024.08.09

プロ注目の石塚裕惺を擁して5年ぶりの甲子園に乗り込んだ花咲徳栄だったが、初戦でまさかの敗退となった。写真:THE DIGEST写真部

 出直しの1敗――2017年に全国制覇を果たした花咲徳栄が初戦で敗退した。5年ぶりの甲子園の舞台だったが、1対2で初出場の新潟産大付に逆転負け。地区大会で強豪校を破って初出場を果たした相手の術中にハマっての敗戦だった。

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「甲子園に出て負けて、甲子園に出て負けてを繰り返して、甲子園での勝ち方を熟知して優勝した学校だったんで、5年も空いちゃった。甲子園で勝つために必要なことを説いてきたつもりでしたけど、またやり直しです」
 
 花咲徳栄の岩井隆監督はそう敗戦を受け止めた。

 2回にドラフト上位候補と評判の石塚裕惺の出塁から1点を先制。だが、そのまま突き放せずにいると、やがて相手にペースを握られた。2人の投手の巧みな配球にタイミングをずらされて打線は分断。6回に同点、7回に勝ち越されてしまったのだった。

「相手は複数点ではなくて1点を取るチームだったんで、2点、3点を取りに行こうと臨んだんですけど、ずれちゃって打球が上がってしまったのが残念ですね」(岩井監督)

 試合前から花咲徳栄が警戒していたのは新潟産大付の足だった。先頭打者の戸嶋翔人は新潟大会6盗塁をマークした俊足打者で、さらに三塁コーチがリード位置などを指示するなど徹底してバッテリー揺さぶりをかけてきた。
 足攻を仕掛けるチームは僅差勝負になると神経戦になる。バッテリーはもちろんこと、守備陣全体が大きな警戒心を持たなければならなくなる。一方、大差をつけてしまえば、足攻めは気になることはない。岩井監督が「1点を取ってくるチーム」と相手チームを表現したのはそのためだ。だから、一気呵成に攻める必要があった。

 しかし、粘られた。

「少しタイミングがずれていた。走塁死もあったし、焦っちゃったのかな」と岩井監督は唇を噛んだ。

 7回に勝ち越され、この夏、初のビハインドを背負った花咲徳栄ナインは余計に焦った。石塚はこう証言する。

「(6、7回に)連続で失点してしまったのが大きかった。同点で終盤になればまた違ったとは思う。自分たちは県大会で接戦を経験してきたんで大丈夫だと言い聞かせてきたんですけど、県大会は乱打戦の接戦でした。投手戦の接戦は初めての経験で、リードされて難しいところはありました。先制してから得点を重ねていって相手の戦意をなくすのが理想だったんですけど、粘り強いチームでそうさせてくれなかったですね」
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「最初はガードを固めて、ジャブとボディブローで出足を止めて。最後にストレート」