プロ野球

【DeNA】移籍初年度で見事なV字回復! 佐々木千隼が魅せるリリーバーの矜持「どんな場面でもその仕事が大事な役割」

萩原孝弘

2024.08.13

昨年の現役ドラフトで加入した佐々木。5月に一軍昇格し、防御率1.93と活躍をみせている。写真:萩原孝弘

☆移籍1年目で増す存在感

 週に1回の登板に備えるローテーションピッチャー、勝利の方程式に入り役目を果たすセットアッパー、最終回を締めくくるクローザー。

 オールスターに選出されるような、常にスポットライトを浴びる花形スターたちと比べると、確かに派手な存在ではない。しかし143試合の長丁場を戦い抜くプロ野球チームにとって、決して欠かすことのできないポジションを賄う存在もまた、貴重である。

 現在その役目を淡々とこなし続けている男が、佐々木千隼。昨年の現役ドラフトでDeNAに加入した8年目の右腕は、21年にはリリーフとして54試合登板で8勝、防御率1.26と活躍。しかしそこから成績は下降線をたどり、昨年はわずか2試合の登板に留まった。だが今年は5月下旬に一軍昇格すると、ここまで防御率1.93とV字回復を果たしている。特にチームの連敗中に灼熱の夏場でイニングを喰う仕事を全うし、ベンチの期待にしっかりと応えている。三浦監督も「回またぎでも、イニング途中でもですけども、どんな場面でもいい準備をしてマウンドに上がってくれてます」と最敬礼している。

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 ブルペンを預かる小杉陽太ピッチングコーチは「ロングリリーフもあるし、回の途中もある。試合によって投げるシチュエーションも試合の序盤だったり、中盤も終盤もあるので、すごく大変なところで準備してもらってる」と指揮官と同じ感想を口にする。そのうえで「彼はそこのポジションにちゃんと今コミットしてくれてる。今求められてるところは逆に言うと重要なポジションでもあるじゃないですか。だから僕らもリスペクトしています」と評価も高い。

 メンタルもフィジカルも削られる状況を熟知していることで「極力ブルペンでの球数とかを減らすように、こちらでもコントロールしながらやってるっていうところですね」とケアに抜かりはない。それに加え「あとはフィジカル面ですね。ベイスターズに来てからその重要性に気づいた。データとかトレーニングとかやっぱめちゃくちゃ材料が多いからって、すごい興味津々にいろんなことやってますよ。だから投げてようが投げてなかろうが、絶対にトレーニングはもう欠かさずやるようにしていて。S&Cの人とも連携取りながら、彼のそのメカニクスでここが課題だよねって言った時にじゃあこういうトレーニングを落とし込もうかっていうサイクルでやっているんです」と新たに肉体改造にも着手。

 具体的には「今だったら前足が止まらないで膝が前に流れてしまうから、制球に苦しんで強いストレートが投げれないってところが動作解析でわかった。それを重点的に、平地でやったのを次は傾斜でやってみようとか」とDeNAの誇る最新の武器を最大限利用していると明かした。さらに「そういったことをやりながら、つい最近は今度ベンチプレスもやるようになって。なのでまだまだ、全然伸びしろあるよねってところですよ」と将来性にも太鼓判を押した。

 こうした取り組みが元となって良化に繋がっていると小杉ピッチングコーチは分析。「大変な役割ではあるけど、それをリカバリーだけで補っていくんじゃなくて、しっかり強化をする中で土台を積み上げていく、エンジンを大きくしていくって話ですね。シーズン中の暑いときですので、なるべく陽に当たってる時間を少なくして、あとは室内でちゃんとそういう時間を確保する。それでパフォーマンス自体もちょっとずつ良くなってきましたよね」と話している。

 本人も「元々そんなにやってこなかったので、ベイスターズに来ていろんな人と話し合って取り組むようになりました。ほかにも色々な面で違ったやり方があるので、それがいろんな変化に繋がってきてるのかなって思いますね」と新たな環境もいい方向に向かっていると手応え。「まだ始めて間もないのでそんにはですけれども、身体は強くなってると思います。多少は投球パフォーマンスに繋げられている感じですね。これからもどんどん強化していきたいです」と少しだけ笑顔を見せた。
 
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「おこがましいんですけど、すごいいいブルペンチームだと思います」