史上初のタイブレークとなった夏の甲子園大会決勝。試合は10回表に2点を奪った京都国際(京都)が関東第一(東東京)の反撃を1点に抑え、見事初優勝を飾ったが、決勝戦の展開も勝ち上がった両チームの戦いぶりも、今年の高校野球を象徴するものだった。
【動画】1点差の二死満塁から最後はスライダーで空振り三振! 京都国際が甲子園100周年の夏の頂点に立つ
"今年の高校野球"は、低反発の新基準バット導入とも言いかえることができる。選手の安全面を考慮して導入されたこのバットの影響は大きく、ホームラン数はセンバツが3本(うちランニングホームラン1本)、夏も7本と、両大会とも金属バットの使用が認められて以降、最少となった。
」
ホームラン、長打が出ないとなると1点の重みはそれまでとは大きく異なってくる。そこでモノを言うのがまず投手力と守備力だ。優勝した京都国際は中崎琉生(3年)、西村一毅(2年)という安定した2人の左腕を擁し、6試合で6失点。準優勝の関東第一も技巧派左腕の畠中鉄心(3年)と本格派右腕の坂井遼(3年)を中心に5試合で6失点としっかり相手打線を抑え込んでいた。
さらにこの両チームは守備でもたびたび好プレーを連発。準決勝では関東一が9回2死から本塁への好返球で試合終了という場面もあった。高校野球では「投手を中心とした守り」という言葉を使う監督も多いが、今大会はそれをいかに高いレベルで実践できるかが重要だったことがよく分かる。ちなみに、準決勝に進出した青森山田(青森)もよく似たスタイルで勝ち上がってきたチームだった。
一方、攻撃面で重要になってきたのが1点を確実に奪うための小技と機動力だ。京都国際は6試合で盗塁は1個だけだったが、19犠打を記録。確実に得点圏に走者を進め、1点ずつ奪う野球を徹底していた。準優勝の関東第一も5試合で15犠打を記録。盗塁も3個決めており、1番から3番まで足を使える選手を並べて相手の守備にプレッシャーを与えていた。
初出場ながら初戦で花咲徳栄(埼玉)を破った新潟産大付(新潟)や、強豪を相次いで破ってベスト8に進出した大社(島根)も機動力を生かした攻撃を看板としていた。逆にバント処理のミスが失点に繋がるケースも多く、そういう点でも小技と足を生かした攻撃が有効だったと言えそうだ。
その一方で気になるのは、こういった細かい野球を目指すあまり、バッティングの指導が疎かになり、それによって打者のレベルが落ちる危険性があることだ。もちろん、以前の金属バットで力任せに打っていたことで、木製バットで苦しむ打者が多かったことは確かである。
ただ、低反発バットで長打が出づらくなったことにより、最初からそれを放棄してしまう指導につながる恐れもあるのではないだろうか。ただでさえ日本の野球界は小技や機動力を生かしたスモールベースボールを必要以上に重視する傾向が強く、投高打低の傾向が強い今年のNPBでも送りバントが増えている。
しかし、昨年のWBC準決勝で死闘を勝利に導いたのは吉田正尚(レッドソックス)のスリーランと、村上宗隆(ヤクルト)の2点タイムリーツーベースであり、長打力がなければ世界一にはなれなかったはずだ。「パワーのある選手だけが長打を目指せば良い」という意見もありそうだが、過去の例を見ても、高校時代に長打力がなかった選手が力をつけていくケースも少なくない。最初から小技を重視しすぎることで、選手の可能性を狭める恐れもあるはずだ。
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"今年の高校野球"は、低反発の新基準バット導入とも言いかえることができる。選手の安全面を考慮して導入されたこのバットの影響は大きく、ホームラン数はセンバツが3本(うちランニングホームラン1本)、夏も7本と、両大会とも金属バットの使用が認められて以降、最少となった。
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ホームラン、長打が出ないとなると1点の重みはそれまでとは大きく異なってくる。そこでモノを言うのがまず投手力と守備力だ。優勝した京都国際は中崎琉生(3年)、西村一毅(2年)という安定した2人の左腕を擁し、6試合で6失点。準優勝の関東第一も技巧派左腕の畠中鉄心(3年)と本格派右腕の坂井遼(3年)を中心に5試合で6失点としっかり相手打線を抑え込んでいた。
さらにこの両チームは守備でもたびたび好プレーを連発。準決勝では関東一が9回2死から本塁への好返球で試合終了という場面もあった。高校野球では「投手を中心とした守り」という言葉を使う監督も多いが、今大会はそれをいかに高いレベルで実践できるかが重要だったことがよく分かる。ちなみに、準決勝に進出した青森山田(青森)もよく似たスタイルで勝ち上がってきたチームだった。
一方、攻撃面で重要になってきたのが1点を確実に奪うための小技と機動力だ。京都国際は6試合で盗塁は1個だけだったが、19犠打を記録。確実に得点圏に走者を進め、1点ずつ奪う野球を徹底していた。準優勝の関東第一も5試合で15犠打を記録。盗塁も3個決めており、1番から3番まで足を使える選手を並べて相手の守備にプレッシャーを与えていた。
初出場ながら初戦で花咲徳栄(埼玉)を破った新潟産大付(新潟)や、強豪を相次いで破ってベスト8に進出した大社(島根)も機動力を生かした攻撃を看板としていた。逆にバント処理のミスが失点に繋がるケースも多く、そういう点でも小技と足を生かした攻撃が有効だったと言えそうだ。
その一方で気になるのは、こういった細かい野球を目指すあまり、バッティングの指導が疎かになり、それによって打者のレベルが落ちる危険性があることだ。もちろん、以前の金属バットで力任せに打っていたことで、木製バットで苦しむ打者が多かったことは確かである。
ただ、低反発バットで長打が出づらくなったことにより、最初からそれを放棄してしまう指導につながる恐れもあるのではないだろうか。ただでさえ日本の野球界は小技や機動力を生かしたスモールベースボールを必要以上に重視する傾向が強く、投高打低の傾向が強い今年のNPBでも送りバントが増えている。
しかし、昨年のWBC準決勝で死闘を勝利に導いたのは吉田正尚(レッドソックス)のスリーランと、村上宗隆(ヤクルト)の2点タイムリーツーベースであり、長打力がなければ世界一にはなれなかったはずだ。「パワーのある選手だけが長打を目指せば良い」という意見もありそうだが、過去の例を見ても、高校時代に長打力がなかった選手が力をつけていくケースも少なくない。最初から小技を重視しすぎることで、選手の可能性を狭める恐れもあるはずだ。
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