9月10日火曜日の午後、今永昇太(カブス)が、自身の精神状態に異変を感じたのは、敵地ドジャー・スタジアムに着いてからのことだった。いつものように球場で昼食を摂り、登板準備を始めようとすると、「何か変だ」とトイレに駆け込んだという。
【動画】投球前に笑顔で会釈!今永昇太×大谷翔平の「日本人オールスター対決」が実現
「食べたものをすぐ吐いちゃったんです。そういうこと、たまにあるんですけどね」
今永がそう言って快活に笑ったのは、その数日後、遠征先デンバーでのことだ。
当日は大谷翔平との日本人対決+怪我からの復帰登板を果たす山本由伸と投げ合う日だった。日本メディアだけではなく、地元シカゴやロサンゼルスの地元メディアまでもが、「(鈴木誠也を含む)日本人4人が同じフィールドに立つのは、あなたにとってどんな意味を持ってますか?」とざっくり訊いてきたぐらいだ。プレッシャーがあって当然である。
ところが――。
「その時はいつか面白い話にしようと思ってましたね。僕、世の中の9割9分は笑いに変えられると思っている人間なんで、吐いちゃったけど『これ、めっちゃオモロイやんっ!』て思ったんです」
そういう話になったのは、ドジャース戦で山本由伸と投げ合い、7回3失点で今季13勝目を挙げた試合直後の会見で、彼自身がこう告白したからである。
「今日はマウンドに上がるまですごく恐怖心があって、足もガタガタ震えてましたし、ボール持った手もすごく震えてました。すごく恐怖心と闘っているなという気持ちでマウンドに上がりました……なんでなんですかね、分からないですけど。プレッシャーだったりとか、周りの期待に応えなきゃいけないというので、自分を追い込みすぎていたなという感じです」 今永がそういう弱気なことを口にするのは、実は初めてではない。以前も、好投した試合後に「マウンドに上がるまでは不安だった」と言ったことはあるし、「スイッチが入るまではいろいろ考えてしまう」と話したことがある。
「で、試合前......って言ってもブルペン行くより全然、前の話......午後4時ぐらいのことなんですけど、ロッカーに座って、変な感じがしたんでボールを持ってみたんですけど、そしたらこんな感じで......」
今永はボールを持った左手を小刻みに震わせた。
山本の圧倒的な立ち上がりのピッチングにより、1回表のカブスの攻撃が3者三振で終わり、今永はその裏のマウンドに上った。彼の精神状態がどうであれ、相手が日本人投手という部分を除けば、いつもの風景である。ただし、今永が対戦する最初の打者は、1番・大谷翔平である。
「あの日はブルペンでも良くなくて、変化球が1球もストライクが入らなくて、真っすぐもまったく指にかからなかった。でも、初回を全力で投げて乗り切ったことによって、『あとはこのくらいでいいかな?』っていう感じになれたんです」
この「初回を全力で投げて」という部分はある意味、メジャーリーグにおける今永のピッチングの肝となっている。それは必ずしも、最大出力で全力投球するという意味ではない。
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「食べたものをすぐ吐いちゃったんです。そういうこと、たまにあるんですけどね」
今永がそう言って快活に笑ったのは、その数日後、遠征先デンバーでのことだ。
当日は大谷翔平との日本人対決+怪我からの復帰登板を果たす山本由伸と投げ合う日だった。日本メディアだけではなく、地元シカゴやロサンゼルスの地元メディアまでもが、「(鈴木誠也を含む)日本人4人が同じフィールドに立つのは、あなたにとってどんな意味を持ってますか?」とざっくり訊いてきたぐらいだ。プレッシャーがあって当然である。
ところが――。
「その時はいつか面白い話にしようと思ってましたね。僕、世の中の9割9分は笑いに変えられると思っている人間なんで、吐いちゃったけど『これ、めっちゃオモロイやんっ!』て思ったんです」
そういう話になったのは、ドジャース戦で山本由伸と投げ合い、7回3失点で今季13勝目を挙げた試合直後の会見で、彼自身がこう告白したからである。
「今日はマウンドに上がるまですごく恐怖心があって、足もガタガタ震えてましたし、ボール持った手もすごく震えてました。すごく恐怖心と闘っているなという気持ちでマウンドに上がりました……なんでなんですかね、分からないですけど。プレッシャーだったりとか、周りの期待に応えなきゃいけないというので、自分を追い込みすぎていたなという感じです」 今永がそういう弱気なことを口にするのは、実は初めてではない。以前も、好投した試合後に「マウンドに上がるまでは不安だった」と言ったことはあるし、「スイッチが入るまではいろいろ考えてしまう」と話したことがある。
「で、試合前......って言ってもブルペン行くより全然、前の話......午後4時ぐらいのことなんですけど、ロッカーに座って、変な感じがしたんでボールを持ってみたんですけど、そしたらこんな感じで......」
今永はボールを持った左手を小刻みに震わせた。
山本の圧倒的な立ち上がりのピッチングにより、1回表のカブスの攻撃が3者三振で終わり、今永はその裏のマウンドに上った。彼の精神状態がどうであれ、相手が日本人投手という部分を除けば、いつもの風景である。ただし、今永が対戦する最初の打者は、1番・大谷翔平である。
「あの日はブルペンでも良くなくて、変化球が1球もストライクが入らなくて、真っすぐもまったく指にかからなかった。でも、初回を全力で投げて乗り切ったことによって、『あとはこのくらいでいいかな?』っていう感じになれたんです」
この「初回を全力で投げて」という部分はある意味、メジャーリーグにおける今永のピッチングの肝となっている。それは必ずしも、最大出力で全力投球するという意味ではない。