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ドジャースは本当に“短期決戦に弱い”のか?――プレーオフと「運」の厄介な関係――<SLUGGER>

出野哲也

2024.10.01

過去2年はいずれも地区シリーズで敗退。「ドジャースはプレーオフに弱い」というイメージが定着しているが...? (C)Getty Images

●プレーオフのような短期決戦は本当の実力を反映しているのか

 今年、ワールドチャンピオンになれなければ、ドジャースのデーブ・ロバーツ監督は解任される――このような憶測が流れている。今に始まった話ではない。そもそも昨年オフにもクビになるのではとの噂はあったし、来季が契約最終年で、現時点では延長の話は聞こえてこない。今季もリーグ最高勝率の巨大戦力を擁しながら、9年間でワールドシリーズ制覇は2020年の1度だけとあって、いつ何時「ポストシーズンで勝てる」監督に替えられても不思議はないのだ。

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 以前から、ロバーツ監督のポストシーズンにおける采配には疑問符がつけられてきた。有名なのは18年、1勝2敗で迎えたワールドシリーズ第4戦。7回1死まで無失点に抑えていた先発のリッチ・ヒルを交代させたところ、後続が打たれて4点リードを失い、逆転負けを食らったのだ。当時のドナルド・トランプ大統領が「7回まで余裕で投げていた投手を下ろして4点リードをフイにするとは。ビッグ・ミステイク!」とツイートしたために大きな話題となったのだが、この試合以外にもポストシーズンでは継投ミスを指摘されることが少なくない。

 ここ2年もドジャースは111勝、100勝を収めながら、プレーオフでは地区シリーズで早々に敗退し、ファンを嘆かせていた。とりわけ昨年は、レギュラーシーズンで16ゲーム差をつけていた同地区のダイヤモンドバックス相手に1勝もできず3連敗を喫するショッキングな負け方。ロバーツ以外の監督であれば何度も世界一になっていたのでは? と考える人がいてもおかしくはない。
 しかし一方で、ドジャースが彼の下で毎年プレーオフに出ているのは事実だ。ロバーツ政権で地区優勝を逃したのは21年だけ。それもジャイアンツが球団史上最多の107勝もしたからであって、ドジャースも106勝していた。少なくとも世界一を争うステージに立つという最小限の仕事はできている。それだけでなく17、18、20年の3度リーグ優勝もしているのだから、そこまで非難されるほどでもないはずだ。

 もちろん最終目標はワールドシリーズの勝利なのだから、それができなければ監督が責任を取るのは当然だ――という意見も頷ける。しかし、ここで一つの疑問が湧く。そもそもポストシーズンのような短期決戦は、どれだけ真のチーム力を反映しているのか。言い換えれば、本当に一番強いチームが世界一になっているのか? という疑問だ。

 昨年のナ・リーグを制したダイヤモンドバックスは、レギュラーシーズンは84勝でワイルドカード3番手だった。チーム力のバロメーターである得失点差に至ってはマイナス15。メジャー史上、得失点差マイナスでワールドシリーズまで進んだのは1987年のツインズ以来、わずか2度目という珍事中の珍事であった。

 そんなチームがどうして100勝のドジャースを倒せたのか? 考えられる理由は3つある。一つは、Dバックスが短期決戦に強かったから。もう一つはその逆で、ドジャースが短期決戦に弱いから。そしてもう一つは、単なる運だった――というものだ。
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ポストシーズンを勝ち抜くための「公式」は存在しない?