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プロ野球

【なぜ日本野球はバントを“乱用”するのか?:第3回】ビッグボールの方が実は「手堅い」? セイバーメトリクスの専門家が“送りバント信仰”を斬る<SLUGGER>

SLUGGER編集部

2024.12.20

メジャーでは「2番といえば強打者」で、大谷もこれまで主に2番に座っている。(C)Getty Images

メジャーでは「2番といえば強打者」で、大谷もこれまで主に2番に座っている。(C)Getty Images

「送りバントは非効率的な作戦である」ということは、日本のファンの間でも徐々に浸透している。海の向こうのメジャーリーグでは、大谷翔平やムーキー・ベッツ(ともにドジャース)といった強打者が2番に入ることが当たり前。にもかかわらず、日本プロ野球ではいまだに「無死一塁から送りバント」が「当たり前」になっている。

 なぜ、日本では送りバントへの過剰信仰が残っているのだろうか? セイバーメトリクスの観点からさまざまなデータ分析を行うDELTAの岡田友輔氏、宮下博志氏に語ってもらった。

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――「送りバントが効率的な作戦でない」ということは、ファンの間でもかなり浸透してきていると思います。にもかかわらず、プロ野球の現場でいまだに送りバントが多用されているのはなぜだと思われますか?

岡田友輔 球団もある程度は分かってきているとは思います。どちらかというと、現場の指導者がまだアップデートできていないというのが一点。もう一点は、我々も含めて「バントが非効率な作戦である」と伝える側の力不足もあるかな、と思います。プロ野球中継などではいまだに「走者が出たらバントがセオリー」という伝え方がされていますから。選手の側も「アウトを取らせてランナーを進塁させる」という感覚がずっと継承されているのかなと思います。
 

 どうしてもゲッツーのマイナス面の大きさが強調されているので、だったら「最低限送った」「仕事をした」ということが重視されるのではないかと思います。得点を最大化するより「最低限の仕事をする」という日本人的な考え方が大きいのかな、と思います。
 
宮下博志 バントという作戦の成功体験が語られているのも大きいんじゃないかと思いますね。過去の蓄積に基づいて、バントそのものがプラスに評価されること自体が大きいと思います。「あのバントで勝った」というのはイメージできても、「あのバントで負けた」というのはなかなか突き詰められて分析されないですからね。

――成功体験という意味で言うと、「打率はどんなに頑張ってもシーズン4割はいかない。一方バントは多くの場合、成功率が6割を下回ることはない」というのが、バント多用の根拠としてよく引き合いに出されますが……。

岡田 それは「成功」の定義がまず間違ってるんですよね。まず、ヒットの3割は出塁を伴うので。それに対して、バントの成功率は90%くらいあるとしても、それはもうアウトを伴った進塁でしかないので。両者の価値が同等ではないんです。

 日本の野球は「イニングごとに得点を取ること」が目的になっているんですよ。でも、野球というのは本来、9イニングの中で得点を最大化して、相手より1点でも多く取るのが攻撃の目的のはずなんです。でも、日本では送りバントでアウトになっても「やることはやった」とみなされてしまうわけですよね。その繰り返しが非効率な作戦の選択を続けてしまう要因なのではないかなと思います。
 
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