プロ野球

【キャンプの見どころ】ヤクルトは高津ー斎藤隆のホットラインで投手陣再建なるか。外野手はイースタンの帝王・塩見に注目

氏原英明

2020.01.29

イースタンで打ちまくった塩見だが、今年のキャンプは1軍を勝ち取れるか勝負どころだ。写真:日刊スポーツ/朝日新聞社

 プロ野球の春季キャンプが一斉にスタートする。フリーエージェント(FA)による移籍やルーキー、新外国人など新加入選手によってチーム編成は新しくなったが、各チームがシーズンを勝ち抜くためのポイントはどこにあるのだろう。キャンプで注目される見どころを探った。

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 昨季まで2軍監督を務めた高津臣吾新監督がどんなチームを作り上げていくのか楽しみである。なかでも、ピッチングコーチに同じメジャーリーグのブルペンを務めた齋藤隆が就任。投手力が課題のチームだけに、その手腕に注目だ。

 昨季の防御率が12球団で最も悪い4.78。しかし、人材がいないのかと言ったら決してそうではない。ビジョンを持った起用、育成方針が必要だろう。ゴールデンルーキーの奥川恭伸は右肘の炎症が発覚しただけに、計画的に育てていかなければならない。

 エースと呼べる投手がいないのが現状だ。チームトップの8勝を挙げている石川雅規が比較的そう呼べるくらいだが、彼はもう40歳。かつてのエース小川泰弘は12敗を喫しているほどで、原樹理は12試合先発にとどまり、故障でシーズンの後半を棒に振っている。

 ベテランの石川がこのままエースとして君臨するのか、小川の復活、原が持っている力を発揮するのか。それとも、昨季19試合に先発した高橋奎二が一気にブレークするのだろうか。

 一方のブルペン陣は石山泰稚が完全復活すれば、落ち着くだろう。近藤一樹、マクガフら実績のある投手たちがいる。どう運用していくかが鍵になるだろう。

 高津監督といえば、ピッチングコーチだった2015年、ブルペンの調整法をメジャー式に変えた。何度もブルペンで肩を作る従来の方式から転換してリーグ制覇につなげている。今回は監督として指揮をとりつつ、同じくメジャーでブルペンを務めた齋藤ピッチングコーチを参謀として、また新たな風を吹き込んでくるかもしれない。
 
 打線はバレンティンの穴を埋める作業が必須の課題になっている。

 すぐさま同じだけの本塁打を求めるのは酷だが、左翼の空いたポジションがこのキャンプの争点になりそうだ。ただ、それは左翼だけを埋めるという作業ではない。

 まず、ヤクルトはこのオフ、元メジャーリーガのエスコバーを獲得した。守備職人とも言える選手の加入は、いわば、センターラインを引き締める役割を担っているだろう。

 その影響で三塁のポジションが熾烈になる。昨季は村上宗隆が守ることもあったが、彼は一塁に重きを置き、廣岡大志、西浦直亨らで争うことになる。太田賢吾は2軍スタートだ。

 外野手はセンターを青木宣親、右翼を雄平が守るとして、左翼候補は坂口智隆の可能性もあるが、高齢化が著しい。スラッガータイプの中山翔太や、打率.310、16本塁打、長打率 .579 出塁率も .430とイースタンで打ちまくっていた塩見泰隆も争いに加わってくるだろう。

 三塁と左翼を巡る争いはこの2ポジションだけでなく、もし、坂口が一塁に回った場合には、村上が三塁に回ることもある。そうなると、競争はさらに激化するというわけである。

 それぞれに持ち味のある選手たちをどう配置していくのか。投手陣の争いとはまた違った胃をきりきりとさせるような戦いが繰り広げられそうだ。

取材・文●氏原英明(ベースボールジャーナリスト)

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【著者プロフィール】
うじはら・ひであき/1977年生まれ。日本のプロ・アマを取材するベースボールジャーナリスト。『スラッガー』をはじめ、数々のウェブ媒体などでも活躍を続ける。近著に『甲子園という病』(新潮社)、『メジャーをかなえた雄星ノート』(文藝春秋社)では監修を務めた。