プロ野球

【キャンプの見どころ】楽天は松井が先発転向で、クローザー争いが混沌。中堅手は辰巳が一歩リード、田中、オコエら好素材がひしめく

氏原英明

2020.01.31

昨年入団した辰己。遊撃手争いの中では一歩リードしている存在だ。写真:日刊スポーツ/朝日新聞社

 プロ野球の春季キャンプが一斉にスタートする。フリーエージェント(FA)による移籍やルーキー、新外国人など新加入選手によってチーム編成は新しくなったが、各チームがシーズンを勝ち抜くためのポイントはどこにあるのだろう。キャンプで注目される見どころを探った。

   ◆    ◆    ◆

 昨季セーブ王のクローザー・松井裕樹が先発に再挑戦する。これによって、クローザー争いが勃発した。試合の最後を締める重要な役割だけに、慎重にセレクトしたい。

 1番手の候補に上がるのが森原康平だ。昨季は松井に次ぐ64試合に登板し、29ホールドをあげた。28ホールドのブセニッツも、もちろん候補になる。クローザーを任せられるだけの力はある。

 今季米球団から加入してくる2人もその争いに加わるはずだ。牧田和久は、2年のメジャー球団挑戦ののちに国内復帰。古巣、西武には戻らず、東北で再起を図る。もともと日本時代は様々なポジションを任されてきたが、どこでも平然とこなせる精神的な強さがある。

 もう一人のシャギワは、ドジャースでは成績を残せなかったが、チームの中心選手である則本昂大や浅村栄斗と同い年なので、良い影響を受けるだろう。重要なイニングを任される可能性も高い。

 以上の4人ほどがクローザー候補。キャンプではその選定に時間が割かれるはずだ。

 また、ロッテから人的補償で獲得した酒居知史はブルペンに厚みを増してくれるだろう。宋家豪ら昨年のメンバーらともにチームを勝利に導いてもらいたい。

 一方の先発ローテーションは、松井が先発に加わり、エースの則本昂大、岸孝之との3枚看板となるから心強い。残りの枠は金銭トレードで獲得した涌井秀章がどこまでのパフォーマンスを見せてくれるのかは注目の一つになる。辛島航、弓削隼人のサウスポーコンビもいて頼もしい。石橋良太、藤平尚真らも虎視淡々とその座を狙っている。

 頼もしい前の3人と争いの中で後ろの3枚が出来上がれば、安定したシーズンを送れるはずだ。
 
 野手陣は年齢の近い世代が中心に座り、円熟期を迎えている。
 F Aで獲得した鈴木大地、昨季に移籍してきた浅村栄斗が中軸に座って、ブラッシュ、島内宏明らで還していく。今年からキャプテンに就任する茂木栄五郎がリードオフマンの役割を果たすことで、得点力は上がるはずだ。

 レギュラー争いが混沌としているのは捕手と中堅手だ。長くチームを支えてきた嶋基宏が昨季限りで退団。正捕手争いは予断を許さぬ状況が続いている。

 昨季の試合数では、堀内謙伍が最多のスタメンマスクをかぶった。年齢的にも若くて期待されるが、本キャンプでは右肘の手術の影響で2軍スタートとなる。34試合スタメン出場の太田光、捕手に復帰する岡島豪郎や足立祐一にもチャンスがあるというわけである。

 中堅手は、昨季88試合にスタメン出場し、ルーキーだった辰巳涼介が一歩リード、2018年に18本塁打を放った田中和基、ポテンシャルの高いオコエ瑠偉など、好素材がひしめいている。

 また、安泰の内野陣だが、春季キャンプの1軍メンバーにルーキーの小深田大翔、黒川史陽が抜擢された。特に、守備力にも定評のある小深田がショートに入ることになれば、茂木を三塁に回すことが可能になり、守備の負担を減らすこともできる。そうなれば、鈴木が二塁、浅村を一塁というシャッフルがされるわけだが、内野の全ポジションを守れる鈴木がいるぶん、たくさんの起用法が試されるはずである。

 新監督に就任した三木肇監督は、ヤクルトのヘッドコーチ時代には大胆な守備シフトを敷くことが多かった。理論派としても知られ、指揮官になってどんな戦い方をしてくるのか、選手の配置も含めて注目したい。

取材・文●氏原英明(ベースボールジャーナリスト)

【PHOTO】艶やかに球場を彩るMLBの「美女チアリーダーズ」!

【著者プロフィール】
うじはら・ひであき/1977年生まれ。日本のプロ・アマを取材するベースボールジャーナリスト。『スラッガー』をはじめ、数々のウェブ媒体などでも活躍を続ける。近著に『甲子園という病』(新潮社)、『メジャーをかなえた雄星ノート』(文藝春秋社)では監修を務めた。