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アメリカは満票寸前のイチローも日本では92.6%、得票数が「川相昌弘>阿部慎之助」の不思議……ここが変だよ日本野球殿堂<SLUGGER>

出野哲也

2025.01.26

アメリカ野球殿堂投票での1票不足は野手史上2人目の快挙。なのに、日本ではイチローの殿堂入りを「否」としたのが8%近くもいた。(C)Getty Images

アメリカ野球殿堂投票での1票不足は野手史上2人目の快挙。なのに、日本ではイチローの殿堂入りを「否」としたのが8%近くもいた。(C)Getty Images

 1月21日、イチローのアメリカ野球殿堂入りが決定した。惜しくも満票とはならなかったが、得票率は99.7%。394人の投票者のうち、1人を除いて全員が彼の名前にチェックを入れたのだ。それほどまでにイチローがメジャーリーグで残した実績は高く評価されている。

 しかし、その5日前に発表された日本の野球殿堂での投票では得票率92.6%。「イチローは殿堂入りに値しない」と判断した投票者が26人もいたのだ。これには当然ながら非難の声が沸きあがった。イチローは日本では9年プレーしただけなので、期間の短さが理由だと考えられなくもない。だが7年連続首位打者に3年連続MVP、史上初の年間200安打など、内容の濃さは年数不足を補って余りある。投票しなかった人物の名は明らかにされていないが、ソフトバンクの王貞治球団会長が「(投票者の)中にはへそ曲がりもいる」と述べていた通り、見識不足の謗りは免れない。

 イチローに限らず、日本の殿堂の投票結果は首を捻りたくなるものが多い。NPBでの実績では他の追随を許さない王ですら得票率は93.2%、国民的英雄の長嶋茂雄も90.1%。イチローやONのどこに票を投じない理由があったというのだろう。1年目での殿堂入りも、イチローでようやく7人目という少なさだ。
 
 今回、プレーヤー表彰ではイチローの他に岩瀬仁紀が選ばれたが、多くの名選手がまだ当選を果たせずにいる。通算2132安打、406本塁打の最強捕手・阿部慎之助は78票。史上11位の2432安打、358盗塁、ゴールデングラブ4回(※三塁での受賞を含む)の名遊撃手・石井琢朗はわずか31票。生涯打率.310で10位にランクし、MVPにも2度輝いた小笠原道大も石井と同じ31票に甘んじた。ベストナインの受賞回数は阿部が9回、石井は5回、小笠原は7回である。

 ところが通算1199安打、43本塁打、ベストナイン1回の川相昌弘には、イチローと石井に次ぎ3番目の211票が投じられた。しかも得票数は20年以降、ほぼ毎年200を超えている。

 その理由は、通算533犠打が「世界記録」「ギネス記録」だからというものであろう。だが、これは過大評価と言わざるを得ない。詳しくは以下の記事を参考にしていただきたいが(川相昌弘が殿堂入り投票で野村謙二郎、石井琢朗より多く票を得る不条理。再考するべき「犠打世界記録」の価値<SLUGGER> | THE DIGEST)、送りバントとは「ヒットが期待できない打者」に対して授けられる作戦である。だから阿部は通算31本、小笠原に至っては2本しか犠打はない。
 
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