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プロ野球

バレンティン移籍の影響は?神対応の雄平が描く新生ヤクルトの青写真

小中翔太

2020.02.04

キャンプイン初日から全開の雄平。写真:徳原隆元

キャンプイン初日から全開の雄平。写真:徳原隆元

「ゆうへいさ~ん、サイン下さ~い」

 キャンプ初日の練習を終え、タクシー乗り場に姿を現した雄平を見つけると少年たちから一斉にリクエストの声が上がる。

 この日は土曜日とあって、選手とファンを隔てる三角コーンとバーの向こうには、たくさんの人が色紙とペンを手にして待ちかねていた。

 あまりの多さに驚く雄平だが、選択肢は1つだった。すぐに人だかりへ向かって歩く。「喜んでもらえるなら、5分や10分(のサイン)くらい、大したことじゃない」。待たせていたタクシーを後輩に譲り、少年野球チームのもとへ向かい、ペンを走らせた。

 雄平がファンサービスを疎かにしないのは、自身の実体験によるところが大きい。子どもの頃、松井秀喜(元巨人、ヤンキースなど)のサインをもらったことがある。その頃を思い出すと、自分にサインを求めてくる子どもたちの気持ちが痛いほどよくわかる。

 雄平がひととおりのサインを終えて帰路に着くタクシーが発車した時、自然と大きな拍手が沸き起こった。
 
 ファンとの交流だけではなく、もちろん本業にも精を出している。初日の練習を終えた高津臣吾新監督は、「よく準備してきてくれました。特にベテランがしっかりしてきてくれたというのが伝わりました」と、35歳・雄平の動きに満足感を示す。

 また、フリー打撃においても、初日は目慣らしの意味合いを込めたミート中心の調整になりがちだが、逆方向のスタンドへ叩き込めるほど、すでに力強い。

「体ができているので、あとは試合に向けて、より細かいところをやっています。特に今は確実性も大事ですが、この暑い環境に慣れることと、体がきつい中で、できるだけ力をボールに伝えるイメージを持っています」と、雄平は言う。

 第1クールからシートノックに入るのも例年通り。毎年、試合より緊張するというシートノックではレフトを守った。

「(ポジションは)グルグル回ると聞いていました。出られるのであればどこでも幅を広げたいです。ライトの方が数多く守っているので、慣れてはいますけど、どこでもやれます」

 この献身的な姿勢も、すべてはチームの勝利のためだ。

「やっぱり優勝したいので……。バレンティンは抜けましたが、全員で守って全員で点を取る、全員野球で優勝できるような雰囲気があります。もちろん一人ひとりのレベルアップもそうですが、よりみんなでやるような意識になっていくと思います。高津監督のカラーがこれからどんどん選手に浸透していき、試合に入るにつれて、しっかりプレーで表現できるようになっていけば、勝てると思います」

 雄平の大事な宝物、松井秀喜のサインは今でも実家に飾ってある。

 ヤクルトのキャンプ地「ANA  BALL  PARK  浦添」を訪れた少年たちにとっては、神対応してくれた雄平がヒーローであり、彼の背番号「41」がグラウンドで輝きを放っている。

取材・文●小中翔太

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【著者プロフィール】
こなか・しょうた/1988年1月19日生まれ。京都府宮津市出身。大学野球連盟で学生委員を務め裏方の道へ。関西を中心に活動しウェブ媒体や雑誌に寄稿する。
 

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