東北福祉大の6大会ぶり4回目の優勝で幕を閉じた全日本大学野球選手権。ドラフト候補となる選手が多く出場したこともあって、連日NPBはもちろんMLBのスカウト陣も視察に訪れていたが、その前でアピールに成功した選手についてピックアップして紹介したいと思う。今回は野手編だ。
【表】どこよりも早い2025ドラフト候補ランキング1~50位一覧(1月1日時点)
まず4年生で最も強いインパクトを残したのは大塚瑠晏(東海大4年・遊撃手・東海大相模)になるだろう。1回戦の青森大戦では第1打席でいきなり先制の2ランホームランを放つと、その後も2打席連続でファーストを強襲する内野安打を放つなど3安打、2盗塁をマーク。続く城西国際大戦でも3安打1盗塁、準々決勝の早稲田大戦でも1安打1四球、敗れた準決勝の福井工大戦でもホームランと犠牲フライと4試合で16打数8安打、2本塁打、3盗塁と見事な成績を残した。
下級生の頃と比べると明らかに打撃が力強くなっており、確実性も高い。守備については元々プロの一軍レベルという評価を得ていただけに、打撃がレベルアップしたことで評価も上がっていることは間違いない。ショートは人気になりやすいだけに、上位はもちろん1位指名の可能性もありそうだ。
打撃の面で大塚に匹敵するアピールを見せたのが秋山俊(中京大4年・外野手・仙台育英)だ。1回戦の久留米工大戦では第1打席で四球を選んだ後、ライトスタンドへのホームラン、レフトオーバーのツーベース、センター前ヒットときれいに三方向に打ち分けてあわやサイクルヒットの活躍。続く近畿大戦でもレフト前ヒットとセンターオーバーのタイムリースリーベースを放ち、3試合で9打数5安打3打点、長打3本と見事な結果を残してみせた。
左投手もまったく苦にせず、合わせるだけでなくしっかり振り抜いてホームラン、長打にできるというのが大きな魅力だ。打撃以外はそこまで目立つものがなく、スラッガータイプではないのでそこまで高い評価になることは考えづらいが、支配下の4位前後であれば十分に狙える位置にいると言えるだろう。
大塚、秋山ほどの強烈なインパクトはなかったものの、小田康一郎(青山学院大4年・一塁手・中京)と常谷拓輝(北海学園大4年・遊撃手・札幌静修)の2人も持ち味を発揮した。
小田は準々決勝の北海学園大戦で第2打席にセンターへのツーベースを放つと、7回の第4打席には146キロのストレートをレフトスタンドへ叩き込んでみせた。大会を通じては3試合で4安打と少しミスショットも目立ったが、盗塁も2つ決めて足でもアピールしている。打撃技術の高さは大学球界でも屈指で、ファースト以外も守れるポテンシャルはあるだけに展開次第では上位指名の可能性もありそうだ。 一方の常谷は敗れた準々決勝の青山学院大戦で3安打を放つなど3試合で12打数6安打を記録。すべてシングルヒットだったが、巧みなリストワークで高いレベルの投手を相手にも対応できるところを見せた。またショートの守備でも一つエラーはあったものの、重心の安定したフットワークと正確な送球が光った。プロのレベルでは何か飛びぬけたものがない点が厳しく見られそうだが、攻守のバランスが良く、貴重な右打ちのショートだけに支配下位指名を検討する球団があっても不思議ではないだろう。
最後に、下級生で1人取り上げたいのが佐藤悠太(東北福祉大3年・外野手・報徳学園)だ。1回戦と2回戦はともにシングルヒット1本に終わり、2試合で4三振と外に逃げる変化球に苦しんでいたが、準決勝ではツーベースとホームランを含む4安打、決勝でもスリーベースを含む3安打の大活躍でチームの優勝に大きく貢献し、MVPにも輝いたのだ。
特に驚かされたのが準決勝のホームランで、センターバックスクリーンの左に飛び込む特大の一発であり、来年のドラフト1位候補と言われている鈴木泰成(青山学院大3年・投手・東海大菅生)から打ったという点も大きなプラス要因だ。元々投手だっただけあってライトからの返球も強く、運動能力も高い。大学日本代表候補合宿に追加招集されなかったのは残念だが、このまま順調にいけば来年の上位候補となることも期待できそうだ。
文●西尾典文
【著者プロフィール】
にしお・のりふみ。1979年、愛知県生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。アマチュア野球を中心に年間400試合以上を取材。2017年からはスカイAのドラフト中継で解説も務め、noteでの「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも多くの選手やデータを発信している。
【表】どこよりも早い2025ドラフト候補ランキング1~50位一覧(1月1日時点)
まず4年生で最も強いインパクトを残したのは大塚瑠晏(東海大4年・遊撃手・東海大相模)になるだろう。1回戦の青森大戦では第1打席でいきなり先制の2ランホームランを放つと、その後も2打席連続でファーストを強襲する内野安打を放つなど3安打、2盗塁をマーク。続く城西国際大戦でも3安打1盗塁、準々決勝の早稲田大戦でも1安打1四球、敗れた準決勝の福井工大戦でもホームランと犠牲フライと4試合で16打数8安打、2本塁打、3盗塁と見事な成績を残した。
下級生の頃と比べると明らかに打撃が力強くなっており、確実性も高い。守備については元々プロの一軍レベルという評価を得ていただけに、打撃がレベルアップしたことで評価も上がっていることは間違いない。ショートは人気になりやすいだけに、上位はもちろん1位指名の可能性もありそうだ。
打撃の面で大塚に匹敵するアピールを見せたのが秋山俊(中京大4年・外野手・仙台育英)だ。1回戦の久留米工大戦では第1打席で四球を選んだ後、ライトスタンドへのホームラン、レフトオーバーのツーベース、センター前ヒットときれいに三方向に打ち分けてあわやサイクルヒットの活躍。続く近畿大戦でもレフト前ヒットとセンターオーバーのタイムリースリーベースを放ち、3試合で9打数5安打3打点、長打3本と見事な結果を残してみせた。
左投手もまったく苦にせず、合わせるだけでなくしっかり振り抜いてホームラン、長打にできるというのが大きな魅力だ。打撃以外はそこまで目立つものがなく、スラッガータイプではないのでそこまで高い評価になることは考えづらいが、支配下の4位前後であれば十分に狙える位置にいると言えるだろう。
大塚、秋山ほどの強烈なインパクトはなかったものの、小田康一郎(青山学院大4年・一塁手・中京)と常谷拓輝(北海学園大4年・遊撃手・札幌静修)の2人も持ち味を発揮した。
小田は準々決勝の北海学園大戦で第2打席にセンターへのツーベースを放つと、7回の第4打席には146キロのストレートをレフトスタンドへ叩き込んでみせた。大会を通じては3試合で4安打と少しミスショットも目立ったが、盗塁も2つ決めて足でもアピールしている。打撃技術の高さは大学球界でも屈指で、ファースト以外も守れるポテンシャルはあるだけに展開次第では上位指名の可能性もありそうだ。 一方の常谷は敗れた準々決勝の青山学院大戦で3安打を放つなど3試合で12打数6安打を記録。すべてシングルヒットだったが、巧みなリストワークで高いレベルの投手を相手にも対応できるところを見せた。またショートの守備でも一つエラーはあったものの、重心の安定したフットワークと正確な送球が光った。プロのレベルでは何か飛びぬけたものがない点が厳しく見られそうだが、攻守のバランスが良く、貴重な右打ちのショートだけに支配下位指名を検討する球団があっても不思議ではないだろう。
最後に、下級生で1人取り上げたいのが佐藤悠太(東北福祉大3年・外野手・報徳学園)だ。1回戦と2回戦はともにシングルヒット1本に終わり、2試合で4三振と外に逃げる変化球に苦しんでいたが、準決勝ではツーベースとホームランを含む4安打、決勝でもスリーベースを含む3安打の大活躍でチームの優勝に大きく貢献し、MVPにも輝いたのだ。
特に驚かされたのが準決勝のホームランで、センターバックスクリーンの左に飛び込む特大の一発であり、来年のドラフト1位候補と言われている鈴木泰成(青山学院大3年・投手・東海大菅生)から打ったという点も大きなプラス要因だ。元々投手だっただけあってライトからの返球も強く、運動能力も高い。大学日本代表候補合宿に追加招集されなかったのは残念だが、このまま順調にいけば来年の上位候補となることも期待できそうだ。
文●西尾典文
【著者プロフィール】
にしお・のりふみ。1979年、愛知県生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。アマチュア野球を中心に年間400試合以上を取材。2017年からはスカイAのドラフト中継で解説も務め、noteでの「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも多くの選手やデータを発信している。
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