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高校野球

【甲子園】どちらが勝ってもおかしくなかった好ゲームの中で…京都国際と尽誠学園を隔てた2番打者の役割の差<SLUGGER>

氏原英明

2025.08.17

 5回裏にはそんな木下の送りバントなどもあって逆転に成功したが、6回裏にも大事な局面を迎える。相手投手が西村になったばかりだったが、下位打線の安打でチャンスを作り、2死満塁でここも2番・木下を迎えた。ここで追加点を挙げることができれば、この試合は一歩先に出ることができる。そんな場面だった。

 しかし、木下は2度バントで揺さぶるそぶりを見せると、簡単に2ストライクとなった。1球ボールを挟んだ後の4球目を軽く当てて三塁へのフライに終わった。

 木下は唇を噛む。

「チャンスで僕が捉えきれなかったのが負けにつながったので悔しいです。2番打者の役割はつなぎ。2死満塁の時でも同じで、打ちに行きたかったんですけど、セーフティのサインが出ていて、追い込まれてから苦しいバッティングだった」

 一見木下の失敗のように聞こえるがそうではなく、これは役割に過ぎない。尽誠学園にとっては、2番打者に求められるものはつなぎ役であり、試合を決めることではないということだった。それが木下の言葉にも集約されている。打つことよりもつなぐことが2番打者の役割だった。

 一方、京都国際は2番の長谷川が初回に先制のホームを踏んでいるように、チャンスメイクの役割もあった。8回の1死一、二塁のチャンスではセーフティバントを敢行したのは、先述した通り走者を進めるためでもあった。エンドランも考えていたというから、京都国際の場合は2番に求める役割りが異なるようだ。

 小牧監督が話す。
 
「(長谷川瑛は)長打を打てますし、バスター、エンドラン、相手の嫌がる役割を何でもできる。一方で試合を決めてくるようなバッティングもできるので、1番も3番もできるタイプなんです」

 現代野球、特にメジャーでは、「2番に最強打者を置く」ということが往々にしてある。だが、高校野球の場合はつなぎ役が多い。どちらを選ぶかは指揮官の裁量によるが、そこに試合を動かすタイミングが多くあるというのも、紛れもない事実なのだ。

 京都国際と尽誠学園を隔てた紙一重の差。

 それは2番の「役割」の違いだった。

取材・文●氏原英明(ベースボールジャーナリスト)

【著者プロフィール】
うじはら・ひであき/1977年生まれ。日本のプロ・アマを取材するベースボールジャーナリスト。『スラッガー』をはじめ、数々のウェブ媒体などでも活躍を続ける。近著に『甲子園は通過点です』(新潮社)、『baseballアスリートたちの限界突破』(青志社)がある。ライターの傍ら、音声アプリ「Voicy」のパーソナリティーを務め、YouTubeチャンネルも開設している。

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