ファーム落ちの時期に、それを見つめ直す期間もあったが、結果的に最後までベストパフォーマンスに戻しきれなかった。オフに昨年を振り返ったとき、１年間リリーフとして戦う上で、安定した技術の再現性が必須であると、改めて痛感した。

「調子の波がまったくなくなることはないと思うので、それをどれだけ小さくできるか。考え方、メンタル面ももちろん大事になってくると思いますが、僕の中ではやっぱり技術というのがすごくあったので、体幹、股関節、そのあたりを僕にとってベストな状態に持っていくところを、試行錯誤しながら取り組んでいます」

　シーズン通して受けてきた守護神・益田直也や松永昂大ら、ロッテを支えてきたベテランリリーバーたちからのアドバイスも、大きな財産となっている。

「本当にいろんな状況で投げさせてもらって、考え方や思考の持っていき方を、本当に何度も何度も教わってきました。試合をやる上での頭で考える部分をすごく吸収させていただいて、本当に勉強になった１年だったと思います」
  　楽天では松井裕樹の先発転向を受け、新たな勝ちパターンの一角に期待がかかるが、そのポジションが約束されたものではないことは十分承知している。

「対戦相手として見てきて、ここのリリーフ陣は層が厚いと感じていました。正直投げるところがないんじゃないかなという気持ちでした。ただ、開幕一軍という思いでキャンプインしているので、競争してポジションを勝ち取りたい。僕は１年目なので首脳陣からの信頼とかは他の投手と全然違うと思うので、まずは信頼を勝ち取っていきたいと思います」

　昨年経験した数多くの財産を糧に今季の飛躍を誓っていた中、周囲も酒居本人も驚いた楽天への移籍。今、古巣へどんな思いを抱いているのか。

「対抗心じゃないですけど、（移籍させて）悔しいなって思ってくれるくらいの活躍をすることが恩返しになると思っています。獲っていただいたのはロッテさんですし、この世界に入れたのもロッテさんのおかげなので、（恩返しができるよう）それを目指して頑張ります」

　鴎から犬鷲に姿を変えた４年目リリーバーが今季、たくましくなった翼を広げて、幕張の地に舞い降りるのか。そんな姿を密かに心待ちにしている。

取材・文●岩国誠（フリーライター）

【著者プロフィール】
いわくに・まこと／1973年生まれ。プロ野球のニュース番組制作に携わるTV映像ディレクター。一時は球団公式SNS用動画制作やパ・リーグTVでの制作・配信を担当。その縁からフリーライターとして、webメディアでのプロ野球記事の執筆を始める。また、舞台俳優としての経験を生かして、野球イベントなどの運営や進行役など、幅広い活動を行っている。

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