それに正直、彼がデビューからの9試合(8先発)で防御率4.80と苦戦した当時は、さほど有力な候補とは思えなかった。6月最後の先発となった敵地でのアストロズ戦(27日)で、4回7失点の散々な内容で降板した時には、マイナー降格もあり得ると思ったぐらいだ。
ところが、ホートンはその後の14試合の登板中12試合で1失点もしくは無失点に抑えるなどして、その間の防御率は1.36と無双。カブスの20年以来となるプレーオフ進出に欠かせぬ戦力になった(アストロズ戦以降、ホートンが先発した試合でチームは8勝2敗と大きく勝ち越した)。
とりわけ、7月11日以降の防御率1.03は、その間40イニング投げた投手としてはMLB全体でも最高成績。自責点が公式記録となった1913年以降では球団史上、15年のジェイク・アリエタが記録した0.75(その年、彼はサイ・ヤング賞に輝いた)に次ぐ快挙でもあったのだから、1位票を投じる理由としては十分だった。
ホートンは昨年の最優秀新人であるスキーンズやヒルよりもイニング数が少なく、クオリティ・スタート(QS=先発して6回以上3失点以下)もわずか5試合しかなかったが、それも前述のように球団が1試合最多94球、平均約78球と投球数の制限を厳しく行ったためだと考え、あまり考慮しなかった。
だからというわけではないが、総合指標として重宝されているWAR(Wins Above Replacement)についてもあまり重視しなかった。
ホートンのWAR2.0(Baseball-Reference版)はボールドウィンの3.3や、3位票を投じたブルワーズのケイレブ・ダービン三塁手(11本塁打、18盗塁、OPS.721)の2.8、4位票を投じた同じくブルワーズのアイザック・コリンズ外野手(9本塁打、16盗塁、OPS.779)の2.1より下なのだが、前述の理由で投票したため、格付けの順位が逆転してしまったわけだ。 皮肉だったのは、最後の1枠=5位票を投じたチャド・パトリック(ブルワーズ)のWARが、実際の投票で5位となったデイレン・ライル(ナショナルズ)や、アグスティン・ラミレス(マーリンズ)より高かったことだろう。
・パトリック
23試合 119.2回 3勝8敗 防御率3.53 127奪三振 WHIP1.28 WAR1.8
・ライル
91試合 11本塁打 41打点 打率.299 OPS.845 WAR0.8
・ラミレス
136試合 21本塁打 67打点 打率.231 OPS.701 WAR?0.4
新人最多の21本塁打を記録したラミレスがマイナス査定だったのは、出場136試合中63試合が指名打者での出場だったことにも起因していると思われるが、過去のサイ・ヤング賞投票などで少なからずWARを参考してきただけに、今後の参考になった。
最後になるが、ボールドウィンの最優秀新人賞受賞については、まったく異議がないことを重ねて記しておきたい。上位5人に選出されたライルもそれに見合った成績を残しており、パトリックが除外されたのも理解の範疇である。
来年は村上宗隆内野手、岡本和真、今井達也らの有力選手がルーキーとしてMLBにやってくる可能性が高い。もしも投票を行うことになるのなら、再び千思万考させられることを期待したいと思う。
文●ナガオ勝司
【著者プロフィール】
シカゴ郊外在住のフリーランスライター。'97年に渡米し、アイオワ州のマイナーリーグ球団で取材活動を始め、ロードアイランド州に転居した'01年からはメジャーリーグが主な取材現場になるも、リトルリーグや女子サッカー、F1GPやフェンシングなど多岐に渡る。'08年より全米野球記者協会会員となり、現在は米野球殿堂の投票資格を有する。日米で職歴多数。私見ツイッター@KATNGO
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ところが、ホートンはその後の14試合の登板中12試合で1失点もしくは無失点に抑えるなどして、その間の防御率は1.36と無双。カブスの20年以来となるプレーオフ進出に欠かせぬ戦力になった(アストロズ戦以降、ホートンが先発した試合でチームは8勝2敗と大きく勝ち越した)。
とりわけ、7月11日以降の防御率1.03は、その間40イニング投げた投手としてはMLB全体でも最高成績。自責点が公式記録となった1913年以降では球団史上、15年のジェイク・アリエタが記録した0.75(その年、彼はサイ・ヤング賞に輝いた)に次ぐ快挙でもあったのだから、1位票を投じる理由としては十分だった。
ホートンは昨年の最優秀新人であるスキーンズやヒルよりもイニング数が少なく、クオリティ・スタート(QS=先発して6回以上3失点以下)もわずか5試合しかなかったが、それも前述のように球団が1試合最多94球、平均約78球と投球数の制限を厳しく行ったためだと考え、あまり考慮しなかった。
だからというわけではないが、総合指標として重宝されているWAR(Wins Above Replacement)についてもあまり重視しなかった。
ホートンのWAR2.0(Baseball-Reference版)はボールドウィンの3.3や、3位票を投じたブルワーズのケイレブ・ダービン三塁手(11本塁打、18盗塁、OPS.721)の2.8、4位票を投じた同じくブルワーズのアイザック・コリンズ外野手(9本塁打、16盗塁、OPS.779)の2.1より下なのだが、前述の理由で投票したため、格付けの順位が逆転してしまったわけだ。 皮肉だったのは、最後の1枠=5位票を投じたチャド・パトリック(ブルワーズ)のWARが、実際の投票で5位となったデイレン・ライル(ナショナルズ)や、アグスティン・ラミレス(マーリンズ)より高かったことだろう。
・パトリック
23試合 119.2回 3勝8敗 防御率3.53 127奪三振 WHIP1.28 WAR1.8
・ライル
91試合 11本塁打 41打点 打率.299 OPS.845 WAR0.8
・ラミレス
136試合 21本塁打 67打点 打率.231 OPS.701 WAR?0.4
新人最多の21本塁打を記録したラミレスがマイナス査定だったのは、出場136試合中63試合が指名打者での出場だったことにも起因していると思われるが、過去のサイ・ヤング賞投票などで少なからずWARを参考してきただけに、今後の参考になった。
最後になるが、ボールドウィンの最優秀新人賞受賞については、まったく異議がないことを重ねて記しておきたい。上位5人に選出されたライルもそれに見合った成績を残しており、パトリックが除外されたのも理解の範疇である。
来年は村上宗隆内野手、岡本和真、今井達也らの有力選手がルーキーとしてMLBにやってくる可能性が高い。もしも投票を行うことになるのなら、再び千思万考させられることを期待したいと思う。
文●ナガオ勝司
【著者プロフィール】
シカゴ郊外在住のフリーランスライター。'97年に渡米し、
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