専門5誌オリジナル情報満載のスポーツ総合サイト

  • サッカーダイジェスト
  • WORLD SOCCER DIGEST
  • スマッシュ
  • DUNK SHOT
  • Slugger
MLB

「創造的破壊という感覚なので怖さはない」菊池雄星が選択したメジャーで勝つための変化

氏原英明

2020.03.05

 もっとも、テークバックを変えると口では簡単に言えても、実践に移すのは容易いことではない。これまで長く染み付いたフォームを変えるのは一筋縄でいくものではない。菊池はこれまでにオフにやってきたトレーニングを継続しつつ、その力を最大限に活かすためのテークバックを作り上げてきたのだ。

 菊池は苦笑気味にいう。

「最初はキャッチャー投げから始めました。トレーナーから指示されてやったんですけど、『雄星さん、全然、上がってません』って(笑)自分ではキャッチャー投げをしているつもりなんですけど、なかなか上がらなかった。そういうことを繰り返して、次は下半身の割れをいかに作るか。それが出来上がってきたのが1月くらいで、今は意識しなくても、この投げ方になっています」

 もともと菊池はデータやバイオメカニクスに興味があり、個人契約を結んでいるネクストベース社の神事努氏のアドバイスを忠実に守る一方、自ら知識を増やすことにも余念がなかった。原理原則を知っているから、囲み取材がはけた数分でもこうした話ができてしまうのだ。メジャーに行ってもなお、底なしの知識欲を保ち続けるのは、彼の能力の一つかもしれない。
 
「これまでの2試合はオフでやってきたことを出せるかをメインに考えて投げてきました。追い込んでからのスライダーであったり、カーブのスピードであったり、プライオリティを考えるのはこれからになってきます」

 5日の登板ではどのような投球を披露してくれるか気になるところだが、このオープン戦だけで全てが出来上がると考えるのは早計だろう。

 彼の頭はどのようなピッチデザインを描いているのか。

「リリースが高い方が投げられる球種は多くなるはず」

 そんな言葉を聞いてしまうと、これからの進化が楽しみでならない。

取材・文●氏原英明(ベースボールジャーナリスト)

【著者プロフィール】
うじはら・ひであき/1977年生まれ。日本のプロ・アマを取材するベースボールジャーナリスト。『スラッガー』をはじめ、数々のウェブ媒体などでも活躍を続ける。近著に『甲子園という病』(新潮社)、『メジャーをかなえた雄星ノート』(文藝春秋社)では監修を務めた。

【PHOTO】艶やかに球場を彩るMLBの「美女チアリーダーズ」!
 

RECOMMENDオススメ情報

MAGAZINE雑誌最新号