専門5誌オリジナル情報満載のスポーツ総合サイト

  • サッカーダイジェスト
  • WORLD SOCCER DIGEST
  • スマッシュ
  • DUNK SHOT
  • Slugger
プロ野球

期待するのは簡単だが…筒香嘉智と山川穂高、2本の劇的弾の裏に垣間見えた「プロの矜持」【日本シリーズ第2戦】

氏原英明

2026.10.26

 そして第2戦。山川は9回に代打で打席に立った。

 本人によれば、王貞治会長からは、もっと前で捉えるように、強く振りすぎなくてもいいという助言を受けていた。

「しっかり当てていこうとは思いました」
 
 ホームランを狙うというより、まずはミートして前に飛ばす。本人はそうした意識で打席に入っていた。

 その結果が同点ホームランだった。

 さぞかし、このホームランには自身の手応えと復調への道標が見えたことだろう。そんなことを想像したが、山川の言葉は意外なものだった。

「本当にたまたまでした。いいボールが来たんで打ててよかった。でも、打席数が少ない中の結果なので、感覚が良くなっているかどうかも、そこまでは分からないですよ」。

 山川といえば練習の虫として知られている。シーズン中にホームランを打っていても納得がいかない時は居残り練習をする。それは前の所属チームの時から変わらない。本数を打つ選手だからこそ打席も必要。ある程度の満足な打席が増えないことには本当の「復調」とは呼べないのだろう。

 昨年の日本シリーズMVPという実績があっても、過去の成功が今の打席を保証してくれるわけではない。打てない時間にも自分の感覚を確かめ、助言を受け入れ、与えられた役割に備える。一本のホームランが出たからといって、必要以上に自分を評価することもない。

 山川は代打として結果を残すため、準備を早く始めることも意識していると話していた。

 筒香と山川。2人のホームランは、打席での状況も、そこに至るまでの背景も異なっていた。

 筒香は、劣勢を覆すために、意識を変えた打席だった。山川は、結果が出ない中でも自分の打撃を見つめ直し、代打という役割に向けて準備を続けていた。

 共通しているのは目の前の状況を把握し、自分に求められる仕事を考えるということ。結果を求められる世界で、結果が出ない時にも自分の取り組みを見つめ、次の機会に備えてきたということだろう。

 2人のホームランは、決勝点にはならなかったが、試合展開から「これしかない」という場面だった。期待は簡単にできる。しかし、それを本当に果たしてしまうのだから、奇しくも91年生まれの2人には共通したプロの矜持を感じずにはいられない。

 日本シリーズの舞台で放たれた2本のホームランは、プロの仕事とは何かを、改めて考えさせてくれた。

文●氏原英明(ベースボールジャーナリスト)

【著者プロフィール】
うじはら・ひであき/1977年生まれ。日本のプロ・アマを取材するベースボールジャーナリスト。『スラッガー』をはじめ、数々のウェブ媒体などでも活躍を続ける。近著に『甲子園は通過点です』(新潮社)、『baseballアスリートたちの限界突破』(青志社)がある。ライターの傍ら、音声アプリ「Voicy」のパーソナリティーを務め、YouTubeチャンネルも開設している。

【記事】初戦落とすも改めて印象づけたDeNAの勝負強さ 投手力を支える緻密な“守備戦術“【日本シリーズ第1戦】

【記事】【氏原英明のドラフト採点2026:セ・リーグ編】阪神は補強ポイントを的確にジャッジし、巨人は未来へ投資……広島はマイナスをゼロにしただけ?<SLUGGER>

【記事】【氏原英明のドラフト採点2026:パ・リーグ編】「ドラ1級先発3枚獲り」のソフトバンクが高評価!穴埋め偏重でガッカリ評価の球団とは<SLUGGER>

RECOMMENDオススメ情報

MAGAZINE雑誌最新号

  • soccer_digest

    10月9日(金)発売

    定価:800円 (税込)
  • world_soccer_digest

    10月15日(木)発売

    定価:890円 (税込)
  • smash

    10月22日(木)発売

    定価:800円 (税込)
  • dunkshot

    10月16日(金)発売

    定価:1650円 (税込)
  • slugger

    9月26日(土)発売

    定価:1100円 (税込)