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侍ジャパン

【節丸裕一のとっておき話】アメリカ戦で起きた「世紀の誤審」でJAPANの怒りは頂点に達した|第1回WBC中編

節丸裕一

2020.04.30

 2次ラウンドのプールAは、この時点で3戦全勝の韓国の1位通過が確定。1勝1敗のアメリカは、最終戦でメキシコに勝てば2勝目で文句なし2位だが、負けても1失点なら失点率で日本を上回り2位通過。つまり、日本が準決勝に進むには、アメリカが2失点以上で敗れることが条件だった。

 しかし、メキシコはもっと不利な条件で、アメリカ相手に13回以降まで戦って、3対0か4対0で勝たなければいけなかった。メキシコは後攻。理論上は可能でも、実質的にはあり得ない条件。メキシコの選手たちは試合前日、ディズニーランド観光を楽しんでいたという。メキシコがアメリカに勝てるとは思えない。日本は99%絶望的な状況だった。

 僕たちJ SPORTSの現地中継チームは、サンディエゴのペトコ・パークで中継機材のセッティングをしながら、かなり暗い気持ちでアメリカ対メキシコをテレビ観戦していた。
 
 3回、大きな事件が起きる。メキシコの選手の打球がライトポールを直撃したにも関わらず、この日は一塁塁審を務めていたデビッドソンは二塁打と判定した。当然メキシコは猛抗議したが、退けられ、テレビにはポールの黄色い塗料が付いたボールをカメラに向け怒りを露わにする選手が映し出された。

 日本戦に続いて繰り返されたデビッドソンの大誤審。これでメキシコの選手の気持ちにスイッチが入ったように見えた。試合はメキシコが2対1で勝利。失点率で日本はアメリカを0.01上回って、準決勝進出が決まった。奇跡にしか思えなかった。

 市内の日本料理店に食事に出かけると、松坂大輔と出くわした。大会前から「世界一になりたいだけ」と言い続けていたから当然だが、喜びがにじみ出ていた。「決勝で投げれば勝ってくれる」と感じた。店の外でばったり会った宮本慎也と和田一浩も、「テレビで見ていて疲れました」と言いながら、やっぱり嬉しそうだった。
【後編へ続く】

文●節丸裕一

【著者プロフィール】
せつまるゆういち。フリーアナウンサー。早稲田大学を卒業後、サラリーマンを経てアナウンサーに転身。現在はJ SPORTSなどでプロ野球やMLB中継を担当。フジテレビONE『プロ野球ニュース』にも出演。

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