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プロ野球

今も記憶に残る「ジャスティス」の剛速球…アマチュア野球ウォッチャー西尾典文が選ぶ「事前情報なしで衝撃を受けた選手」とは?

西尾典文

2020.05.31

 イメージとは違う成長を遂げたが、初めて見たインパクトが強かった例では吉田正尚(オリックス)も当てはまる。吉田を初めて見たのは09年6月に富山で行われた高校野球の北信越大会、桜井高と敦賀気比高の試合だ。この日のお目当ては現在も吉田のチームメイトである山田修義(オリックス)で、山田も最速138キロながらボールの角度が素晴らしく、ドラフト候補に相応しいピッチングを見せていた。

 一方の吉田は1年生ながら4番・レフトで出場。当時のプロフィールは170cm、67kgと今よりかなり細かったが、第1打席で火の出るようなライナーのセンター前ヒットを放った。メモには「他の選手と比べて明らかにヘッドスピードの速さが違う」とある。1年春でここまで強く印象に残る選手はなかなかいない。体のサイズもあって、まさか現在のような強打者になるとは思わなかったが、当時から素質の片鱗は十分に見せていた。

 ちなみに翌年秋の北信越大会では吉田の前の3番を1学年下の西川龍馬(広島)が打ち、金沢高のエースで150キロ右腕と評判だった釜田佳直(楽天)から3安打を放つ活躍を見せており、2年続けて敦賀気比の1年生バッターに驚かされたのもよく覚えている。
 
 最後に紹介するのは石橋康太(中日)。彼のプレーを初めて見たのは中学3年の時である。15年の都市対抗準決勝の前に行われたエキシビジョン・ゲームでリトルシニア選抜チームの4番・キャッチャーとして出場。イニング間の二塁送球タイムは、2.0秒を切れば強肩と言われる中で1.9秒台を2度、実戦でも1.91秒という高校生でもトップレベルのタイムを叩き出したのだ。ヒットこそ出なかったが、たくましい体つきと力強いスウィングも強く印象に残った。

 中学野球を見る機会は他のカテゴリーに比べると少ないが、今まで自分が見た中学生では圧倒的にナンバーワンの選手だ。スーパー中学生は高校で伸び悩むケースも少なくないが、石橋は高校からドラフト指名を勝ち取り、プロでも1年目から一軍出場を果たしている。郡司裕也という強力なライバルが入団してきたが、切磋琢磨してさらなるレベルアップを期待したい。

文●西尾典文

【著者プロフィール】
にしお・のりふみ。1979年、愛知県生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。アマチュア野球を中心に年間約300試合を取材し、全国の現場に足を運んでいる。ドラフト、アマチュア野球情報サイト「プロアマ野球研究所(PABBlab)」を2019年8月にリリースして多くの選手やデータを発信している。

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