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MLB

ロブ・マンフレッドは“MLB史上最悪のコミッショナー”なのか?

出野哲也

2020.07.06

『ボストン・グローブ』紙のチャド・フィンは「彼にとって野球は重要なものなのだと、我々が思える行為が一つでもあっただろうか? ヤンキースファンとして育ったらしいが、その理由は彼らが一番の金持ちチームだったからではないか」と痛烈な皮肉をかましている。

 悪評を決定的としたのは、新型コロナウイルス感染拡大蔓延で延期となったシーズン開幕へ向け、オーナーと選手側が交渉を重ねていた過程で、終始オーナー側に立って行動したことだった。オーナーたちによって選任されている以上、彼らの支持がなければ地位を保てないのは事実だ。だが本来、コミッショナーはあくまで中立の立場からMLB、ひいては球界全体のために最適な判断を下さなければならない。
 
 そう考えた場合、彼がすべきだったのはまず開幕に向けて全力を尽くし、可能な限り早く、そして1試合でも多く開催することだったはずだ。他のスポーツに先んじて開幕を迎えられれば、普段はMLBをあまり見ない国民にアピールすることもできた。

 ところが、マンフレッドは実際にはオーナー側の意見に与し、無観客では試合するだけ損になるとの理由で、できるだけ試合数を少なく抑えようとしていた。交渉が難航する中、具体的な提案も力強いメッセージも発することなく、ただただ傍観するのみ。結局、実権を振るったのは、ほぼオーナー側の意思に沿う60試合での開幕強行を決定した時だけだった。

 そこには野球への情熱は一切感じられず、ひたすらビジネス的な打算があるのみだった。というより、ビジネス的にも最悪の判断だった。交渉が長引いてMLBのイメージが悪化すれば、その分、将来の人気低下や収益減少につながるのだから。前出のフィンは「野球の伝統を軽んじ、事態を悪化させるばかりの“解決策らしきもの”を連発。野球がアメリカという国にとってどんな存在なのかということにまるで思いが至らないようだ」と痛烈に批判している。マンフレッドがトップに立っている限り、21年限りで切れる労使協定の改定交渉もスムースに進むとは考えにくい。

 過去9人のコミッショナーのうち、初代のケネソー・マウンテン・ランディスをはじめ5人が野球殿堂入りしている。マンフレッドは、その殿堂の所在地ニューヨーク州クーパーズタウンからほど近い町の生まれだが、このまま行けば「殿堂に一番近くて最も遠いコミッショナー」として記憶されそうだ。

文●出野哲也

【著者プロフィール】
いでの・てつや。1970年生まれ。『スラッガー』で「ダークサイドMLB――“裏歴史の主人公たち”」を連載中。NBA専門誌『ダンクシュート』にも寄稿。著書に『プロ野球 埋もれたMVPを発掘する本』『メジャー・リーグ球団史』(いずれも言視舎)。

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