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プロ野球

「今までが『千賀A』なら、『千賀B』になる感じ」――今季初勝利を挙げた千賀滉大の“変身”

喜瀬雅則

2020.07.08

 4四球のうち3つは2回までに許したということが、立ち上がりの苦闘を物語る。それでも、剛速球という“撒き餌”を効かせつつ、3回以降は直球を13球にとどめ、140キロ台後半のカットボール、130キロ前後のフォークとスライダーも交えることで、真っすぐ待ちの打者に的を絞らせなかった。5回の締めくくりはブラッシュ、浅村を連続の空振り三振に仕留めるなど、結局は初回の2失点と、3回に浅村から浴びたソロアーチの5回3失点にまとめた。全94球中、ストレート43球の平均球速が154.7キロという圧倒的な数字にも「今までが『千賀A』なら、『千賀B』になる感じです」と本人が表現した“変身”ぶりが見て取れた。

 目指しているのは、持てる体の力、そしてモーションの連動によって生み出す力のすべてを、余すことなく、無駄なく、効率よくボールに伝え切ること。オフには石川柊太と一緒に渡米し、カブスのダルビッシュ有のもとへ“弟子入り”して、フォームのメカニズムを見直した。ダルビッシュ自身が開発したといわれる、スプリットとツーシームの“間”、つまり、右打者の内角へ小さく食い込みながら落ちていくシンカー系の新球スプリームも伝授されたという。
 
 2月の宮崎キャンプでは、連日のように石川、松本裕樹、杉山一樹の“チーム千賀”のメンバーで、それぞれのフォームの映像を徹底的に解析した。千賀とのディスカッションの中で杉山が気づかされたのは、メジャーの右投手が投球後に一塁側へ倒れ込むケースが多いのは、体重移動によって生まれた力を、ボールに余すところなく乗せ切ろうとするからだということだった。千賀もこの日のマウンドで、一塁側へ倒れ込む荒々しさを時折見せた。それは、たゆまぬ研究と進化の表れでもあった。

「リズムも悪く、カードの頭を任せてもらったのに、5イニングしか投げることができなかったことも、しっかり反省しないといけない」。今季初登板を終え、自責のコメントを残した千賀だったが、それでも「勝ち試合」を作った。工藤公康監督も「ボールが高いところはありましたが、力は強かった。当たっている楽天打線に3点というのは、よしとしないといけないかなと思います」と高評価。まだまだ、始まったばかりの2020年ペナントレース。鷹の絶対的エースの“復帰白星”ほど、敵をひるませ、味方を心強くするものはないだろう。

取材・文●喜瀬雅則(スポーツライター)

【著者プロフィール】
きせ・まさのり/1967年生まれ。産経新聞夕刊連載「独立リーグの現状 その明暗を探る」で 2011年度ミズノスポーツライター賞優秀賞受賞。第21回、22回小学館ノンフィクション大賞で2年連続最終選考作品に選出。2017年に産経新聞社退社。以後はスポーツライターとして西日本新聞をメインに取材活動を行っている。著書に「牛を飼う球団」(小学館)「不登校からメジャーへ」(光文社新書)「ホークス3軍はなぜ成功したのか?」 (光文社新書) 

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