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プロ野球

菊池、浅村が退団した中でのリーグ2連覇。カギは辻監督の「選手を輝かせる起用法」にあった

氏原英明

2019.09.26

低打率でも起用され続けた木村は8月に6本塁打と活躍。辻監督の期待に応え、反撃のキーマンとなった。 写真:徳原隆元(THE DIGEST写真部)

低打率でも起用され続けた木村は8月に6本塁打と活躍。辻監督の期待に応え、反撃のキーマンとなった。 写真:徳原隆元(THE DIGEST写真部)

 今季、自身初の2ケタ勝利を挙げた髙橋光成の起用には、辻監督の粘り強さがよく表れていた。

 開幕ローテーションの一角を担った髙橋光は、150kmのストレートとスプリット、スライダーを駆使して、開幕3試合を2勝1敗と快調に滑り出していた。しかし、4月21日のソフトバンク戦で4回6失点でKO負けを食らうと、そこから立て続けに炎上した。5月1日の日本ハム戦は3回持たずに5失点で降板。同8日のロッテ戦では6回7失点と先発の役割をまったく果たせなかった。

 それでも辻監督は髙橋光を先発ローテーションから外さなかった。

 5月14日のソフトバンク戦。髙橋光は打線の援護に支えられて5回5失点で何とか勝利をつかむと、そこから5連勝を挙げた。9月7日に右ヒジを痛めて戦線を離脱してしまったが、シーズン10勝、そのうち4勝は2位のソフトバンクから挙げたものだった。他の指揮官なら、シーズン序盤の炎上で見限っていたかもしれない。しかし、辻監督は髙橋光に試練を与え続けた。

 木村文紀も辻監督の粘り強い起用が実った例だろう。2012年に投手から野手に転向後は、半レギュラー的な役割を担うことが多かったが、今季は規定打席到達に近付くなど出場機会を大幅に増やした。「守備固め」という居場所がないわけではなかったが、辻監督は彼にも楽をさせなかった。

 打率は2割そこそこと低迷する木村だが、8月は6本塁打、15打点の活躍でチームの反攻に大きく貢献した。優勝争いが佳境になった9月16日には、マジックを点灯させるサヨナラ打(相手失策によるランニングホームラン)を放ってみせた。
「投手陣はいろいろ言われながら、増田(達至)、平井(克典)が中心となってもがいて頑張ってくれた。野手に関してはレギュラーの選手たちが長期離脱することなく1シーズン戦い抜いた。その精神力と肉体的強さが2連覇につながった」

 優勝インタビューで辻監督はそう語った。

 投打に主力が抜ける中、下馬評を覆してのリーグ2連覇は、辻監督の選手を輝かせる起用法あってこその快挙だった。

文●氏原英明(ベースボールジャーナリスト)

【著者プロフィール】
うじはら・ひであき/1977年生まれ。日本のプロ・アマを取材するベースボールジャーナリスト。『スラッガー』をはじめ、数々のウェブ媒体などでも活躍を続ける。近著に『甲子園という病』(新潮社)、『メジャーをかなえた雄星ノート』(文藝春秋社)では監修を務めた。
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