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プロ野球

田澤純一の指名見送りは必然?「防御率3.94、奪三振率6.75、来年35歳」という“現実の数字”に下された判断

新井裕貴(SLUGGER編集部)

2020.10.28

 防御率に関しては味方野手の守備力、高いレベルのフィールダーならアウトにしていたであろう打球がヒットになる可能性もあるため、これだけでダメとは言えないが、奪三振率6.75という低さは擁護が難しい。メジャーの全盛時は9個台中盤だったことを考えると、いくら日本の選手が三振をしたがらない打撃をしているとはいえ、単純に空振りを奪えるだけの球威がないことの証左になっている。

 世界一になった時はストレートが平均153キロ前後、切れ味抜群のフォークも素晴らしかった。しかし、今では最速150キロそこそことあって、“あの時”の田澤は完全に過去のものになっているし、その体型もキレを失っているように見える。メジャーだけでなく日本球界もレベルアップは進んでおり、もはや「150キロが大台」ではなくなった。今の田澤は、日本でも平凡なリリーバーになっているのである。

 もちろん、独立リーグから見事な下克上を果たした投手はいる。最新のケースはヤクルトの歳内宏明だろう。2011年ドラフト2位指名で阪神に入団した歳内は故障もあって活躍できず、昨年に戦力外通告を受けると、台湾を経て四国IL・香川に入団した。すると、甲子園で沸かせた投球がよみがえり、今年は9先発で5完投、3完封、防御率0.42、WHIP0.53という驚愕の成績を残したのである。そして、その活躍が認められて9月にヤクルトに入団すると、1829日ぶりの白星を挙げるなど先発としてまずまずの活躍を見せている。
 
 田澤に近いケースでいえば、藤川球児かもしれない。阪神で圧倒的な活躍を見せて海を渡った“火の玉ストレート”はメジャーでは活躍できず、日本球界へ復帰した。しかしその地は、甲子園ではなく、地元の高知県にある独立リーグだった。当時34歳の右腕は久々に先発に移ると、危険球退場の試合もあったが6登板(33.0回)で防御率0.82、2完投、奪三振率12.44という成績を残し、翌年に阪神へ復帰。今季は40歳という年齢もあって苦しい登板が続いたが、昨年までは時に抑えも務め、信頼のできるリリーバーとして活躍していた。

 両者とも一軍経験者であり、藤川に至っては知名度も抜群だ。ビジネス的観点も多少は獲得に影響しただろう。とはいっても、彼らは独立リーグで間違いなく結果を残しており、田澤との決定的な違いはそこだ。歳内も藤川も“現在の力”が通用すると判断されたから契約が与えられたわけで、おそらく田澤に関しては「現在の力が通用しない」とされたのではないだろうか。

 田澤は今後に関してはまだ明言しておらず、来季も独立リーグでプレーするかもしれない。もしかしたら新型コロナが収まり、無事にマイナーリーグが行われれば、再び渡米してメジャー復帰を目指すかもしれない。メジャー年金を満額(21万ドル/約2300万円)もらえるまであと1年に迫っており、もっと先の未来を見据えたら、それはまた納得のいく選択である。
 
 ただ、どんな判断をするにしても、“現在の田澤”の実力は悲しいかな、最盛期の力がないのは疑いようのない事実かもしれない。

構成⚫新井裕貴(THE DIGEST編集部)
 
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