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MLB

「エースと心中するよりデータに賭ける」自分たちのスタイルを貫徹して敗れたレイズ

久保田市郎(SLUGGER編集長)

2020.10.28

 百歩譲って交代そのものはやむを得なかったとしても、2番手にアンダーソンを投入した選択にも疑問が残る。レギュラーシーズンでは防御率0.55と絶好調だったアンダーソンだが、ポストシーズンでは調子を落とし、地区シリーズ第5戦から数えて何と6試合続けて失点していた。ドジャース打線の中心にぶつけるには、あまりにもミスマッチではなかったか。今季のベッツが右投手より左投手を苦手にしていたことも踏まえても、不可解な継投だった。

 代わり端、アンダーソンはベッツにレフト線への強烈な二塁打を浴び、1死二、三塁。続くシーガーの初球はカーブのコントロールが乱れてワイルドピッチとなり、バーンズが生還して同点。さらにシーガーの一塁ゴロの間にベッツが好走塁でホームを陥れ、ドジャースはあっという間に逆転した。

 結局、これが決勝点となってレイズは敗れた。試合後、キャッシュ監督はスネルの交代について「結果的にうまくいかなかったのだから後悔している」としながら、「思考プロセスは正しかったと思う」とも語った。
 
 だが、一つ一つの試合は“生き物”だ。何万という試合のデータから得られた最適解と、ワールドシリーズ敗退がかかった土俵際でエースが一世一代の好投を演じている試合がイコールで結ばれないこともある。

 MLB屈指の貧乏球団でありながら、オープナーをはじめとする独創的な戦略を次々に打ち出してワールドシリーズまで勝ち上がってきたレイズ。マッチアップやデータを基にした攻めの継投も、そうした戦略の一つだった。第6戦の「73球のエース降板」も、キャッシュ監督にとってはいつも通りの展開だったのだろう。

 エースとの心中よりデータに賭ける。それがレイズにとっての“普段着野球”だったということだ。その意味で、やはり今年のワールドシリーズもトレンドを反映する鏡になっていたような気がする。

文●久保田市郎(SLUGGER編集長)

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